事業承継とM&A②~その他~
【2023年1月更新】 今回は、「事業承継とM&A」についてリスクと回避方法や今後の考察などおまとめしています。
早速ご紹介してまいります。
事業承継のご相談の現実
~どんな相談がくるのか?~
①某M&A会社からの営業に辟易している。何とかしてもらえないか。
ある仲介会社にご相談されたところ、毎日と言ってよいほどの営業電話、アポなしでの来社、ひっきりなしのメールが来るようになったとのお話を聞くことがあります。
ご自身からのコンタクト以外にも、証券会社や金融機関など長年やり取りをしている方々からの紹介によって、仲介会社をご紹介されることがきっかけとなる傾向が見受けられます。
②依頼をしたもののなかなか結果が出ない、または動かない。どうしたらよいか。
例えば、「仲介会社にリテイナーフィー(着手金や、コンサルティングフィーなど様々な名目でお金を取る)を払ったものの、何もしてくれずに1年が経過した」などのケースです。
M&A●●を名乗る方々や、資金調達アドバイザー、エンジェル紹介など様々な役割を個人で動いていらっしゃる方々が多く、このような方々で、実際にM&Aに触れた・実務が出来る・周辺の法制度(かつ最新)を知っている、と言う方は意外と少なく、「●●の会社を紹介します」などの紹介ビジネス(マッチング機能)になって終わってしまうことが多々あります。
また、「この5社の中で選んでください。そうしなければ、3か月以内にもっと価額が下がってしまいます」といった、半ば強引に進めようとする会社が存在するのも事実です。
上記のような事にならないよう、実績のみならず「自分の立場に最大限立って、推進してくれる会社なのか」と言った視点から、利益相反行為がないかなど、会社のサービスの性質も重視してみてはいかがでしょうか。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
中小企業のM&Aにおけるリスク
~事業承継のリスクとその回避~
【売却側の留意点】
オーナー企業のよくあるM&Aにおける留意事項として大きく5つにまとめてみました。
1.過大な役員報酬
2.個人的な費用の会社負担付け替え
3.関係会社等を利用した損益調整
4.簿外債務
5.脆弱な管理体制
【買収側のリスク回避のアプローチ】
上記のような売却側の状況を全て受け入れることは、困難と考えます。
このような場合、同じく5つの対処方法が考えられます。
1.買収(売却)価額での調整
2.ストラクチャーの設計での工夫
3.契約書での防衛
4.契約後の実行(代金授受)までの条件の整備
5.ディール自体の中止
以上のような打ち手を講じることで、買収側としてはいったんはリスクを回避していくことができます。
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小規模事業者のM&Aによる事業承継戦略
小規模事業者がM&Aを実施する際に、留意すべき点には大きく2点あります。
1.【税務上の論点】
M&Aを実施するに当たっては以下のような様々な手法があります。
株式譲渡、事業譲渡/会社(新設・吸収)分割、(吸収)合併、株式交換、株式の一部の交換
この中で、すべてに共通して検討の重要性が高い事象は、やはり「税金」です。
・個人の所得として株式売却益に対して課税されるのか
・会社の売買において、会社の事業譲渡益に課税されるのか
と課税主体が異なる点や、
・法人に対して課税されたのち、更に個人株主に課税がかかるスキーム(事業譲渡後に、配当で株主に還元する)
・株式の一部交換に至っては、今後の法案が通るまでは、株式に交換したとき、時価が取得金額よりも高い場合、即座に譲渡益が課されてしまい、課税対象になる(但し、産業競争力強化法上の特別事業再編計画の認定を受けた場合には、売主(株主)レベルでの譲渡益課税の繰延べが実現されることとなった)
など、税務上、課税の場面がそれぞれ異なります。
2.【小規模事業者ならではのM&A手法】
小規模事業者ならではのスキームとして事業譲渡が採り易いといえます。(大企業でも事業譲渡は可能です。)
通常、事業譲渡は会社分割や合併、株式交換など、会社の「組織法上の行為」と区別され、「取引上の行為」として取り扱われるため、「権利や義務の包括的な移転・承継」が生じることはありません。
例えば、事業譲渡において譲渡する対象を取り決めたあと、個別の取引契約がA社からE社まで5社存在し、すべてを、事業を譲り受けてくれる会社に譲渡する場合、それぞれの契約を、買収側の企業にて「個別に巻きなおして頂く」といった実務上の負担が生じます。
これは、あらゆる契約において同様であり、雇用契約も然りです。
このように、事業譲渡には実務上の手間暇が非常にかかってしまうという点がある一方、買い手側が、法人ごと買収するに当たって何らかのリスクを感じている際に、事業譲渡で事業単位を売却し、ディスカウントを防ぐ方法として活用できます。
(もちろん、一概に良策となるとは言えないため専門家と共に最適な手法を見極める必要があります。)
1円でも多くの資金を手元に残していくためには、「税務絵戦略」と「スキーム戦術」がセットで語られるべきであることをご理解ください。
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今後のM&Aが活発化する業界
~事業承継と中食市場~
国内では、製造業が最も多い業種であるにも関わらず、担い手である技能工や単純工の人手不足が他の職種に比較して深刻化していると公表されています。
近年、需要の増加が進んでいる「中食市場」(惣菜、弁当、冷凍食品など)においても、需要の増加に比して、人手不足は深刻な状況です。
生き残りの一手として、商品戦略や販売戦略も重要なのですが、最も重要なのは「販売計画を立てても、人手不足により対応する生産キャパシティがない」という状態を改善することです。
事業承継がうまくいかず廃業してしまう、倒産してしまう製造業者数も多く存在しています。
そこで、次の一手として「事業承継とM&A」が生きてくることになります。
製造業において、M&Aは「需要増のいっぽう、人手不足を起因とした生産キャパシティの限界がある」といった課題を解決するための有効な手段であるといえることから、活発化する業界と言えます。
まずは、自社の従業員の数・正社員・派遣社員・パート・アルバイトなど正確に状況を把握し、それぞれの方々が何を出来るのかを把握するだけでも、円滑な事業承継に結びついていくと考えます。
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次回予告
次回のまとめ記事は「スタートアップ企業のファイナンス事情」をお届けします。
お楽しみに。
―次回更新予定:6月21日(月曜日)