今後のM&Aが活発化する業界①~事業承継と中食市場~
M&Aはどういった業界で生じるか?
今回は、国内の業種において最も多い「製造業」に焦点を当てて事業承継の可能性を探ります。
製造業のM&Aが生じるポテンシャル
国内総生産(名目)おける産業別構成比(2015年)では、製造業は国内の産業の中で
「20.4%(2015年度集計)」
と、サービス業17.0%、卸売・小売業13.9%、不動産業11.4%、建設業5.5%(その他31.9%)と比べ、最も多い産業に部類されていることが分かります。
また、国内における製造の担い手である、1特に技能工・単純工の人手不足感が深刻化している(他の職種(事務職、サービス、販売、専門技術、管理など)に比べ)ことが公表されています。
(出所:経済産業省製造産業局「製造業を巡る現状と政策課題」より)
直近において、景況の回復、需要の増加が進んでいる市場、例えば、10年前から市場が22%も増加し、ついに10兆円産業の仲間入りをした
「中食市場」(惣菜、弁当、冷凍食品など)
においても、需要の増加に比して、人手不足は深刻な状況です。
(出所:2017年度版 惣菜白書より)
大手上場企業の動向
小売業、すなわちスーパーやコンビニ、直近では駅ナカ、デパ地下でおなじみですが、
「惣菜売場の拡充」
の状況は、本メディアをご覧の皆様にとっても、身近なものなのではないでしょうか。
これは、需要の伸びを背景に、小売業を主導とし、惣菜製造ベンダーに対しての生産依頼、共同開発などにより需要を様々な形で取り込もうとしている状況が目の前に見て取れているものかと思います。
ちなみに、価格帯や商品の品数などは、各社の惣菜製造会社又は小売業者の戦略により、大きく異なることが見て取れます。
生き残りの一手には?
むろん、商品戦略や、販売戦略も重要なのですが、今最も重要なのは、
「人手不足により、販売計画を立てても、それに対応する生産キャパシティがない」
といった状態です。
ここにおいて、次の生き残りの一手として、
「事業承継とM&A」
が生きてくる、というわけです。
冒頭の通り、製造業者の割合は多く、職能工などの人手不足は事実としてあるものの、いまだ、事業承継がうまくいかず、廃業をしてしまう、倒産をしてしまう業者数も、多く存在しています。
生き残りの一手に、M&Aが採られていくことも容易に想像できるのではないでしょうか。
まとめ
買収側として、継続して生産していきたい、生産を拡大するために「人手が必要であり、人手こそ最もM&Aにおいて重要なキーファークターである」といったニーズが存在する、製造業が、M&Aと事業承継に適した背景にあるのも、このように中食市場1つを取ってしても、市場全体が成長傾向に業界では
「需要増のいっぽう、人手不足を起因とした生産キャパシティの限界」
といった課題を解決するために、
M&A
といった手段が採られることが容易に想像できます。
まずは、事業承継をするに当たり、自社の従業員の数、正社員、派遣社員、パート・アルバイトなど、正確に状況を把握し、それぞれの方々が何を出来るのか、を把握するだけでも、円滑な事業承継に結びついていくと考えます。
事業承継をお考えの方は、企業価値の算定を行いつつ、従業員のプロファイルを行ってみてはいかがでしょうか。