M&A業界カオスマップ公開とそこから見るM&A業界のイマ
昨今の複雑化するM&A業界のプレイヤーをカオスマップ化
【2020年9月14日更新】
株式会社BIZVAL(以下、当社)は、2020年3月現在M&A業界に関連するプレイヤーを一定の視点でまとめ、カオスマップを公開いたしました。
【特徴】
M&Aに関連する仕事として、M&Aアドバイザリー業務というものがございますが、ご存知のない方も多いかと思いますので、ご説明致します。
M&Aは、会社における企業活動を取り巻く多岐にわたる関連法規(会社法、金融商品取引法等)、会計、法人税を含めた税制度が関わってくるため、多分に高度かつ複雑な行為と言えます。
このため、単純に、モノの売買と異なるため、専門家として助言業務を行う企業が存在し、その存在を一般的に
・ファイナンシャルアドバイザー
・M&Aアドバイザー
などと呼びます。
日本国内におきましては、不動産売買の慣習が色濃く影響されていると見受けておりますが、アドバイザリー業務というものを
・仲介業務
として提供している企業様が多くいらっしゃいます。
欧米では一つの案件の中で、企業と企業との間に立つ行為が利益相反行為になることもあり、仲介行為自体M&Aにおいてはタブー視されています。
このように業界のプレイヤーには専業でM&Aを提供している
・アドバイザリー会社(売り主、または買い主のいずれかの側につき、助言業務、M&A推進を支援する)
・仲介会社
が存在しているという点が、1つの特徴と言えます。
また、ここ1年の間に、M&AにおけるマッチングWEBサイトが複数公開されて行っている点が大きな特徴となっています。
中でも、元々M&A仲介を専業としてきた会社以外にも、転職エージェント、M&AのWEBサイトビジネスを専業とする会社など、様々な業種がWBサイトにおけるM&Aマッチングビジネスに参入をしてきていることが分かります。
専業でM&A仲介事業を行っていた日本M&Aセンターなども、M&Aマッチングのサイトを専業で営む会社として「&Biz」社を起ち上げ、「Batonz」というサイトで運営しております。
監査法人系の中では珍しく、監査法人トーマツが「M&Aプラス」というサイトを展開しています。
また、転職エージェントであるenジャパンは「Mafolova」、ビズリーチの「サクシード」などもM&Aマッチングサイトを公開しています。
WEBサイトにおけるM&Aマッチングを専業とする会社で既に何年も前から展開している「Tranbi」は、大型資金調達なども成功し現状の環境をけん引している存在であり、また、M&Acloud(M&Aクラウド)も起業家から3年を経過し、複数回のサイトのアップデートを行うなど、マッチングサイトとしての存在感を増してきています。
また、M&A仲介会社である日本M&Aセンター出身者で設立されたALIVALの「M&Aナビ」は「売り手情報」、「買い手情報」ともに急ピッチで展開しており、今後の動向に注視してみたいと思います。
【示唆】
この1年の間でWEBサイトにおけるマッチングサイトは増加傾向にありましたが、一服した感があり、今後は生き残りをかけ、各社がユニークな戦略がとっていくことが想定されます。
もともと、転職エージェント会社では「人材募集」を中心に、様々な会社のニーズを情報として保有し、またそれらの会社とのコンタクトが容易である点は、WEBサイトにおける「買い手」の視点の情報量では、頭一つ抜き出た存在であると考えられます。
また、M&A仲介をもともとの専業にしている会社としては、WEBサイトビジネスからの流入をフックとして、リアルビジネスにおけるM&Aマッチングに連携・連動させていくことが真の狙いなのではないか、と推察します。
【課題】
今後の各社の課題としては「売り手」と「買い手」をマッチングする、という点が、具体的にWEBサイトのみで完結しきれるのか、という点になってくるかと思います。
M&Aは、そもそも昔から1,000に3つと言われるくらい、「案件として成立することの難しさ」や「成功することの難しさ」が取りざたされる業界です。
繰り返しになりますが、我が国では「仲介」が主流になっておりますが、欧米では「利益相反行為(コンフリクト)」があるため(簡単に申し上げますと、「買い手」は安く買いたい、「売り手」は高く売りたい、というインセンティブが働く中、間に入り、その両者のニーズを充足することは非常に困難であることが挙げられます)、そもそものビジネスモデルとして、マッチングが簡単に、手軽にできていく半面、「成功を支える」ことはもとより、「ディールとして成立していく」ことをサイトのみで支えていくことが課題の一つだと考えます。
また、利益相反行為に該当するような業界の慣習、懸念点の払拭はもちろんのこと、WEBサイトの構造をどのように変えていくのか、どのように成約を担保していくのか、質の担保をどう図っていくのか、が充足されていかなければ、
「成約しない」
「失敗した」
といったことが続くようなことになり、せっかくの登録ユーザーがチャーン(離反)していくこととなるでしょう。
加えて、成約をしたとて、その後の
「成功モデル」
を作っていくことには時間を要しますし、そもそも、マッチング以前に、事前に綿密にM&A戦略を練り、買収後もリアルビジネスの統合には相当のリソースを割く覚悟がなければならない点は、利用者側として、リアルでのM&A世界と何ら課題感は変わることはありません。
【まとめ】
M&Aマッチングサイトの多くは、小型かつ件数が多い、事業承継関連を推奨、メインターゲットとしていることが現状の主流となっていますが、実際にそれらの成約、成約後の事業成長、企業存続などまでを見据えたモデルまでには至っていない点、加えて、業界の慣習となってしまっている「マッチング=仲介」が、そもそも利益相反ということをはらんでいる点、より利用者側も学習をしたうえで利活用をしていく必要があると考えます。
当社は、マッチング以前に、自社の企業価値がそもそも一体全体何により構成されており、その金額がいくらになっているのか、を正しく把握することから、戦略を立案することをお勧めします。