株式譲渡の実行パターン②~株式の段階的な取得~
【段階的な株式譲渡実行】
段階的な株式譲渡実行、ということで、他の株式譲渡の手法との違いを見ていきます。
【事例】
2013年3月に、三菱商事株式会社(以下、MC社)とキリンホールディングス株式会社(以下、KH社)は、KH社が保有する100%子会社の食品化学事業会社であるキリン協和フーズ株式会社(以下、KKF社)の全株式をMC社が取得することとし、MC社は、2013年7月にKKF社株式の約81%を取得し、2015年1月に残りの全株式を取得しました。
つまり、2回に分けて、株式譲渡を実行したことになります。
(出所)各社プレスリリースより弊社作成
【段階的な取得の目的・背景】
株式を段階的に取得する目的・背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
今回の事例から見ますと、
というようなことが考えられます。
つまり、譲渡対象会社が伝統のある、技術力のある、ノウハウ・ナレッジが蓄積されているような場合、企業文化の統合、技術やノウハウ・ナレッジの共有ということに中期的な時間軸を要する場面が想定された場合、一時に株式譲渡を行うよりも、段階を経て行うことで
ことに重きを置く場合などに、用いられる手法だと理解することができます。
【まとめ】
よく伝統のある会社から、子会社を譲り受けるような場面では、企業文化の統合を行っていくにあたり、時間をかけていくことの方が賢明な判断になることが想定されます。
昨今のM&Aの中では、スピードを重視するあまりに、PMIのことまで念頭に置いていないケースが多々見られますが、結局のところ、ストラクチャーの工夫が見られる案件は、PMIまで視野に入れることができている案件であると推察することができます。