株式譲渡の実行パターン①~株式譲渡対価の分割払い~
【2023年1月更新】【株式譲渡】
通常の株式譲渡であれば、100%株式の譲渡を前提としているケースがほとんどです。
しかしながら、まれに、株式の譲渡実行を複数回に、段階を経て行うことがあります。
この点、昨今、実務のシーンでも使われることが増えてきた
・アーンアウト
と明確に論点が異なる点も含めて、ストラクチャーを整理する必要があります。
そもそもどういったストラクチャーが間違えやすいのでしょうか。
【株式譲渡の段階的実行理解に向けて】
株式譲渡の段階的実行を理解するために、以下の3つを区分しておくとよいでしょう。
1.株式譲渡対価の分割支払い
2.株式譲渡自体の分割実行
3.アーンアウト
【株式譲渡対価の分割支払い】
株式譲渡対価の分割支払い、は簡単です。
株式譲渡契約書に記載のある譲渡対価の支払金額、例えば金150,000,000円を支払うものとする場合、売主、買主の双方が合意するのであれば、
第1回目の支払は2020年10月31日 金50,000,000円
第2回名の支払は2021年3月31日 金100,000,000円
といったように、一度取り決めをした譲渡対価を分割払いする、ということになります。
株式譲渡の譲渡対象となる会社を対象会社、とする場合、対象会社の株主である売主が法人であり、買主も法人である場合は、会計処理を想定するとわかりやすいでしょう。
ー第1回目のトランザクションー
売主(簿価譲渡をした前提)
(現金)50,000,000円 (子会社株式)150,000,000円
(未収入金)100,000,000円
買主
(子会社株式)150,000,000円 (現金)50,000,000円
(未払金)100,000,000円
さて、1点留意点があります。分割の2.譲渡実行の段階的買収との違い、です。
この点は、明確です。
【買収割合】への着目です。
買収割合が、
1.100%の譲渡が完了しており、譲渡対価だけが、後払い
になりますが、
2.段階買収は、最初に発行済株式総数のうち51%取得し、会計上連結子会社化、次に議決権の3分の2超の取得をし、会社法的に特別決議を確保できるようにし、最後に100%取得(残りの3分の1)、を取得する(又は特別決議で株式併合、少数株主はスクイーズアウト)
と、買主の売主の株式の取得数・割合が100%前提ではない点が大きな相違点となります。
【実務における1.分割払いの意図】
さて、話を元に戻します。
譲渡対価の分割払い、ですが元々このストラクチャーは売主にとってはメリットはないものとなります。
売主からしますと、いち早く譲渡代金を支払ってほしい、Cash is KingはM&Aで大原則ですし、それはクロージングと同時に全額、が通常でしょう。
したがって、この場合、何らかの事情が存在するはずです。
想定される事情と言えば、
1.買主側の資金調達の事情で2段階にせざるを得なかった
2.売主側のクロージングの前提条件の充足の大部分を達成すれば、ほぼ譲渡が成就するものの、依然として一部が懸念が残り、買主側が売主側に分割払いとした
という点が挙げられます。
いずれの場合でも、分割までの期間において経済の悪化、事業環境の激変、会社自体の何等かの瑕疵も想定しながら、譲渡契約書の作成が必要となるでしょう。
【まとめ】
いずれにしても、譲渡対価を分割払いする、ということはほとんどのケースで見られないのですが、M&Aでは様々なケースが想定されます。
そのケースに応じて、柔軟に、どういったストラクチャーを採ることによって、そのイシューを解消できるのか、については、豊富な経験や、もともとこのようにストラクチャーの知識、ケースを場合分けしておくことで、誰でも簡単に対応ができるものと思います。
次回は、段階的取得のケースを説明します。
(なお、今回、一部課税について触れておりますが、課税関連に関する責任を著者並びに株式会社BIZVALは一切負うものではありません。記事の転載転用は自由ですが、各自の責任の下、または顧問税理士等とご相談の上、ご利用くださいますようお願い申し上げます。)