過去の事例から学ぶ“失敗と懸念点”
今回は「M&Aにおける失敗と懸念点」をキーワードに過去の事例記事をピックアップしおまとめしています。
それでは早速ご紹介してまいります。
【TOBを考える】ファミマのドンキ買収失敗
2018年12月20日、ユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社が、株式会社ドンキホーテホールディングスのグループ会社化を見送ることを発表しました。
■TOB(株式公開買付)の失敗
TOBとは、市場で売買されている上場会社の株式を、予め“買い取る期間・株数・価格”を提示して、市場外で一括して買い付ける行為を指します。
本件において、ファミマユニーはドンキの株式を総数24,721 株、つまり「0.08%」としか買い付けが出来なかったのです。
通常は、プレミアムを乗せて株価に反映させていき、最終的な市場の売買価額もその価額によりついていくというのが一般的なTOBの動きになります。
しかし今回は、ドンキとファミマユニーとの業務提携や、逆にユニー株をドンキが保有するなど、以前より関係性の強化が取り沙汰されていましたので、相当強気なプライシングでなければ買い付けは成功しなかったということでしょう。
本件のように、TOBは株価の値付けを誤ると非常に寒い結果になってしまいます。
ただし、買収をするために無理にプライシングを強めに出すことも、シナジーが実際に生まれなかった際に相当なダメージにもなるため、TOBにおいては“通常よりもステークホルダーの動きにより一層留意した上で「株価算定」が必要になる”ということになります。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
「株式の持ち合いとM&Aの失敗」~バロー・アークス・リテールから学ぶ~
中堅食品スーパーのバローホールディングスとアークス、リテールパートナーズの3社は2018年12月25日、資本・業務提携したと発表しました。互いに株式を2〜6%程度ずつ持ち合い、店舗運営ノウハウの共有や資材の共同調達などを進めるとのことでした。
驚いたのは持ち合う株式の割合で、2~6%の株式の持ち合いは果たして効果があるのでしょうか。
((原則として、M&Aの効果は「相乗効果(シナジー)」を上げることであり、企業価値が買収前に比較して買収後に上がっていなければ「成功」と定義することはできません。))
まず、M&Aにおいて失敗につながる特徴として以下の5つが挙げられます。
① 他社の経営なのに「何とかなる」と思っている
② 雰囲気に負ける・飲まれてしまう
③ そもそも成功(ゴール)の定義が曖昧
④ 取得割合が中途半端
⑤ アメとムチの使い分けが下手である
本件の「バロー・アークス・リテール」のケースで言うと、④ が懸念点となります。
中途半端な取得割合は「会社の支配力への影響がない」ことから失敗に繋がると考えられるのです。
通常、議決権の3分の1以上の保有により、会社の株主総会の普通決議を執り行えることが支配における1つの目安になります。
また、議決権の過半数以上や、議決権の3分の2以上を目安とすることも多いです。
それにもかかわらず「2~6%」の株式の保有となりますと、ほぼお互いが何もしないのと同じであり、精神的な安定以外は効用が無いと思われます。(例えばお互いの地域への出店攻勢は避けましょう、など)
本件については、2021年現在も「新日本スーパーマーケット同盟」としての3社間での提携活動を推進されており、結果としての“失敗”ではなく、導いた結論に対する“懸念点”として学びある事例の一つになったのではないでしょうか。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
次回予告
次回のまとめ記事は「過去の事例から学ぶ 第2弾」をお届けします。
お楽しみに。
―次回更新予定:7月26日(月曜日)