大塚家具のお家騒動と業績悪化から、事業承継の難しさを考える
大塚家具の各種報道は、ご覧になられている方も多いかと思います。
業績不振が続く大塚家具は平成30年8月7日、平成30年12月期の業績予想を下方修正し、最終損益を13億円の黒字から▲34億円の赤字(前期は▲72億円の赤字)に引き下げると発表し、3年連続で最終赤字となるとのことでした。
売上高も従来予測456億円から376億円(前期比▲80億円)に下方修正しています。
さて、皆さんはこの報道をご覧になり、何を思い、どう受け止めたでしょうか。
BIZVAL MEDIAでは、今回の報道、事実を受けて、事業承継について考察したいと思います。
大塚家具のお家騒動からの示唆
主な出来事
2001年 営業利益75.2億円 過去最高
2009年 営業利益▲14.5億円赤字
2009年3月 創業者の大塚勝久の娘である大塚久美子が社長に就任
2014年7月 大塚久美子社長が解任され取締役に、父の勝久会長が社長を兼任。
2015年1月 大塚久美子取締役が社長に復帰。
2015年3月 株主総会での決議を経て大塚勝久会長が退任。
今からちょうど3~4年前に、社長の交代劇が繰り広げられています。
後日のインタビューでは父 勝久氏は、以下のように述べています。
「私は心の中では、長女と長男が協力してやっていくのが一番だと思っていた。2人でやったら、絶対にどこにも負けない会社になると思っていた。子どもたちの大学での専攻が異なるように、それぞれが得意な分野で力を発揮してもらう。長男の勝之が営業を担うなら、長女の久美子は財務を担うといった具合だ。」
「将来的には大塚家が大塚家具の経営から身を退き、いわゆる「資本と経営の分離」の体制をつくることが望ましいと考えていた。」(ダイヤモンドオンライン 2018年1月9日記事 より一部抜粋)
さて、ここまでが大塚勝久氏の言です。
ご存知の方も多いかと思いますが、勝久氏は、創業者一族同士による委任状争奪戦に発展し、同族経営の上場企業として異例の経営対立を生み、「お家騒動」、「(公開)親子喧嘩」などと報じられていました。
ご自身で手塩にかけて育てた「会社」と「後継者」であったように見受けられますが、ご自身の経営に関してのスタンスを見ていますと、社長の座を譲った後に対しての、行動も、半年で社長を交代する(再び勝久氏が元に戻る)などもあり、市場(投資家)も従業員も、周りの様々なステークホルダーが混乱してしまったのは確かだと思います。
この件での学びは、事業承継の先代から次代への継承時期、継承の仕方ではないでしょうか。
簡単に申し上げると、いったん引いた方が再度経営の場に出てくるということ自体、ほぼ説明がつかない事象ですし、「準備をしていた」というにはあまりにも準備不足の感が否めません。
また、得てして合理的な判断であると思っていることも、家族間においては感情論によって曲がってしまうことも多々あります。
家族経営のメリット、デメリットは他の記事に譲るとしまして、家族経営のデメリットである、市場に上場している企業として求められる行動原理・原則に反してまで、社長の交代、また、勝久氏を追い出すための委任状争奪戦を繰り広げた背景には、もう少し深掘る余地がありそうです。
こういった事業承継は誰に相談すべきか?
皆さんがこういった相談をなさるとき、一体どなたに相談するでしょうか。
大塚家具などの上場企業ですと、証券会社や外資系金融機関などの各種アドバイザリー会社が高い報酬をもとに、有益に見える提案・助言をしてきます。弊社も助言会社の一社ではありますが、果たして、その助言は短期的、長期的、どういった目線で話されていたのでしょうか。
多くの起用されるアドバイザーは短期的な視点に陥ることが多く、信頼におけるのは「苦楽を共にした身近な人」、「過去からの話をよく相談してきた人」と言った意味では、士業の方や、周りのご支援をして下さっている取引先なのかもしれません。
今回の件も、助言会社による助言が入っていたと新聞報道でも拝見しましたが、助言会社などは使い方を誤ると、事業承継どころか、会社の屋台骨がなくなってしまう話になりかねません。
助言会社も短期ではなく、長期の視点に立てる方々もいらっしゃるので、その選別もですが、やはり事業を譲り渡す側の「引き際と覚悟」についてが、最も重要な論点になる、そういったことが今回の一連の3~4年を経て、見えてきたことなのではないでしょうか。
業績悪化は経営戦略上の論点
なお、本稿においては、結果としての業績にはあまり触れていません。
当時や現状の業績悪化といった事実を振り返ってのことは、経営戦略上の論点であり、ここはこれで検討すべきかと思いますが、経営上の失敗は誰しもがあることです。ましてや同じ市場をニトリ、などと比較するのではなく、異業種格闘技戦に巻き込まれている流通・小売業だからこそ、全く別の戦略も必要である、などは正に時代の経営層が対応していく課題ではないかと思います。
考察のまとめ
本記事における上場企業において、親子承継をすることの難しさもさることながら、当時から「第三の選択」がなかったことも踏まえると、「準備」についての真剣かつ入念な準備期間が必要である、ということも付け加えさせて頂き、今回の考察を終えたいと思います。