会社の適正価格を見極めよう!フェアバリューとは?
会社を売却しようとしたとき、最も気になるのが売却価格かと思います。売却価格には、売り手・買い手それぞれの考えがあり、売り手はできるだけ高い値段で、買い手はできるだけ安い値段でと考えるものです。会社には適正な価格「フェアバリュー」があると言われています。そこで今回は、会社の適正価格の見極め方について説明します。
フェアバリューとは、会社の適正な価格のこと
フェアバリューとは、端的に言うと、会社の適正な価格という意味です。株式会社であれば、資本は株式によって調達されます。フェアバリューは、適正な株式価格とも解釈されます。上場企業であれば、株価が公開されており、株式市場での取引によって適正な価格が決まると言われています。しかし、非上場の企業であれば、株式を公開していないため、価格を判断しにくいところです。
フェアバリューという言葉は、M&Aで企業を売却・買収する場合、あるいはIPOによって資金調達を行う場合に用いられます。M&A、IPOどちらのケースでも、企業のより適正な価格を把握する必要があるため、フェアバリューを求められるのです。
上場企業におけるフェアバリュー算出方法
フェアバリューを算出する際、上場企業の算出根拠として株式時価総額を使用することがあります。M&Aで売却するのであれば、株式時価総額に売り手企業が考える企業のプレミアムを加える、または状況次第ではディスカウントが行われることとなります。ここでいうプレミアムとは、公開されていない企業内の情報、相手方が自社を取り込むことにより生じる相乗効果の一部を対価に上乗せさせるなどにより発生する企業の価値です。買い手企業は、売り手企業が提示した価値が妥当かどうかを見極めます。
買い手企業側は、M&Aによって買い手企業が得られる将来的な相乗効果、いわゆるシナジーを見込んで、フェアバリューを算出します。
ここでいう将来的な効果とは、以下2つを考慮し算出されます。
①売り手企業の財務整理・オペレーションの効率化などの経営合理化を行うことによって得られる価値
②売り手企業のブランドや販売網・商品開発力などを活用して得られるシナジー効果の価値
①②の価格が、買い手側にとって享受できる価値を、売り手企業の提示した価格よりも上回るのであれば、買い手企業は売り手企業の価格を適正と考え、M&A交渉は成立していくことになりますが、相乗効果を含めても、売却側が考える価値が上回ってしまう場合は、基本的にはM&Aが成立しないこととなります。
①②それぞれの算出式があるかというと、今のところ明確な算出式はありません。企業ごとに定性的評価・定式的評価を駆使して判断を行っている状況です。算出式がないことから何をもってフェアバリューなのかの評価が分かれるところでもありますので、一般的には、外部の第三者を起用し、ビジネスデューデリジェンス、と呼ばれる企業価値試算などを行うことが多いです。
非上場企業におけるフェアバリュー算出方法
1. PERを用いた手法
非上場企業におけるフェアバリューの算出方法としては、当期純利益を使用して算出する方法があります。同じ業界の上場企業のPER(株価収益率)を参考値として使用します。
PER = 株式時価総額÷当期純利益
当期純利益は、企業の稼ぐ力と言えます。
PERは、株式時価総額が当期純利益の何倍であるか、つまり、PERでその企業の将来的な価値が分かると言われています。
また、PERは同一業界であれば同じ傾向をたどると言われ、同一業界における他社のPERを調査し、参考値として使用されます。
例えば、PERが20倍の業界で、当期純利益が1000万円の非上場企業の価格を算出するとします。この場合、参考として算出される価格は、1000万円×20=2億円となります。PERによって算出された値に、企業のプレミアムを加えた価格が企業価格となります。
ただし、一般的には、非上場会社を、株式の流通する上場会社のPERを参照して計算することはせず、流通していない株式である、と言ったことを理由に「非流動性ディスカウント」と言った、ディスカウントを実施することがあります。
本ケースで言えば、例えば、非流動性ディスカウントとして3割を用い
2億円×(1-30%)=1.4億円
を株式価値とすることとなります。
3割の根拠としては、上場した場合の流通価値が一般的に3割と言われることが多いため、と言われますが、必ずしも、3割を用いなければならない、と言うことではありません。
2. 取引事例法
中小企業の場合、上記のようなPERを用いた方法を使うのも難しいことがあります。そのような場合は、取引事例法という方法で算出を行います。
取引事例法とは、対象となる企業と条件の似た案件の情報を収集し、それらの情報をもとにして価格を算出する方法です。
上場企業の価格算出方法をあてはめることのできない中小企業など非上場企業の価格算出において、取引事例法による価格の算出は合理的な方法だと言われています。
実際に行われた多くの取引事例をもとに価格を算出するため、市場を通じた価格形成が行われているとも言えます。ただし、取引事例法を活用するためには、多くの情報を収集し、データベースを作る必要があります。かつての日本ではM&Aに対して消極的なイメージが持たれていたこともあり、M&Aに関する情報も不足し、取引事例法での適切な価格算定は難しい状況でした。しかし、近年の日本では、M&Aの取引件数が増えており、情報が多くなっているため、取引事例法による価格の算出が可能になってきています。
取引事例法を使用するためには、M&A案件に関する情報が必要です。ですが、M&A案件情報は、個人で収集できる量に限界があります。そこで、M&Aアドバイザーといった専門家の活用を推奨します。M&Aアドバイザーであれば、M&A案件に関する豊富な情報を持っているため、取引事例法による企業価格の算出を行うことができるだけでなく、企業のプレミアムに関する意見をもらうこともできます。
また、M&Aで最も難しいのは、価格を評価することよりも、買い手企業を探すことだと言われていますが、M&Aアドバイザーを活用すれば買い手企業の選定も豊富な情報によりスムーズに進めることができます。ぜひ、M&Aアドバイザーの活用を検討してみてください。
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まとめ
会社の適正価格を算出するのは難しいものです。算出方法の知識を集めつつ、M&Aアドバイザーも活用しながら適正な価格を考えてみるとよいでしょう。