スタートアップ企業のファイナンス事情①
【2023年1月更新】 今回は、「スタートアップ企業のファイナンス事情」についておまとめしています。
(こちらのテーマは2回に分けて更新いたします。)
それでは早速ご紹介してまいります。
スタートアップをめぐる投資環境とその背景
2年前になりますが、日本経済新聞で以下のような記事が掲載されました。
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2018年に日本企業が自社のファンドなどを通じ投資した金額は1300億円超と、17年から9割以上増えたもよう。年2兆円規模の米国に比べ規模は小さいものの、事業環境が激しく変化するなか、自前主義にこだわらず外部の技術やアイデアを取り込み成長を模索する。
M&A(合併・買収)助言会社のレコフが日本企業のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)投資額を集計したところ、18年は12月26日時点で1338億円と過去最高だった17年通年実績(700億円)よりも91%増えた。
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上記より、国内の大企業におけるスタートアップ企業への投資が着実に増加していることが分かります。
これにはどの様な背景があるのでしょうか。
大手企業がベンチャー企業に求めるものの特徴に
「イノベーション(革新・変革)」「ディスラプション(破壊)」という2つのキーワードが挙げられます。
一般的に大企業では、実際の製品のローンチに至るまで、複数の部署との折衝、予算枠の申請、承認、実行の承認、製品化後のプロモートなど時間を要する組織体系になっていることが多く、その中で「現在直面している環境変化」についていくために試行錯誤をしている状況なのです。
スピード感、例えば事業アイデアから製品化までの速度などに優れているベンチャー企業は、“企業内におけるイノベーションを促したい”または“組織を大きく変えていきたい”と考える大企業にとって、大変魅力的な存在であると言えます。
■大企業のスタートアップ買収において3つのステップ
1.イノベーション・ディスラプションへのタッチポイント
スタートアップ企業がやっていることに対して、試験的に興味関心がある状態のときです。
スタートアップとしては、プロトタイプでも良いので製品が完成している場合、この興味関心度合いを一気に高めていくことが出来ます。
2.共に汗をかく
大企業が1で投資・出資をしたことに加え、より大企業内におけるリソースを利活用する、または追加出資をする、直接出資でなくとも、大企業の中において、新たな人財を登用するなどの動きを見せるステップです。
3.取り込み・買収
スタートアップへの出資で終わらず“買収をしたい”、つまり大企業のグループ傘下に入るということになります。
M&Aを狙う・バイアウトをする場合に、以上のような3つのステップがあると認識しておくことで創業者としての役割、自らのコミットメントを設定していくことに繋がり、結果として近道になるでしょう。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
スタートアップ企業のファイナンスにまつわるペインポイント①
スタートアップ企業の中には、順調に投融資を受け成長する企業もあれば、投融資を受けることが出来ずに四苦八苦している企業もあります。
何が障壁となってしまうのか、実際に弊社へのご相談で多いものをご紹介をします。
■投資環境の相談
1段階目でのエンジェル投資や資金調達がなんとか済む方々で、2段階目に訪れる資金調達が思うように出来ないというご相談があります。
なぜ思うようにいかないのか。
それは1段階目での資金調達時の「株価設定」を誤ったためです。
全ての会社においてここが肝になります。その時に募集した方々の数が多く相当な保有割合を渡しているなど、複合的な理由により、2段階目の資金調達が遅れる・出来ないといった状況となります。
この背景にあるのが、安易な調達を進める「ブローカー」「仲介人」「顧問」の存在です。
上記のご相談内容について弊社でご支援させて頂く企業のほぼ100%に、これらの存在があります。
もちろん、全ての人がそうである訳ではありませんが、都度見返りとして報酬をもらう彼らは「ミス・プライシング(=株価設定を誤ること)」か否かなどお構いなしに、エンジェル投資家を紹介していることが事実としてあります。
投資環境が良くなったことも有り、更にこのような個人の「ブローカー的存在」の方に依拠している企業が多い事実に驚かされています。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
スタートアップ企業のファイナンスにおけるペインポイント②
スタートアップ企業が抱えているお困りごとを3つご紹介します。
1.ファイナンスについて誰に聞けば良いのか
スタートアップ企業には、設立当初からエンジェルや投資企業、メンター、アドバイザー、顧問と言われている方々が関与してくる例も珍しくはありません。
しかしながら、経験や知識が十分とは言い難い状態で「顧問業」を営む方もいらっしゃるため、助言の信ぴょう性が乏しいということも起こり得ます。
IPOを準備していこうとする中で、アドバイザーを選ぶ際は、
・今を知っている(直近の上場した企業、上場準備が相当程度進んでいる企業に関与している)
・証券会社・監査法人事情も横比較が可能
などのポイントを見極めることが重要です。
2.計画のリバイス(見直し・修正)が苦手
スタートアップ企業は日進月歩の速さで進化し、成長を遂げていきます。
創業経営者は日々多忙を極めるため、事業計画を作ったまま
「old フォルダに入れっぱなし」
「更新していない」
「毎回新しく作り直している」
「金融機関(創業融資時)に向けて作ったものしかない」
「資本政策と連動していない」
というケースがよくあります。
計画を常に最新にしておくには、ツールの活用がお勧めです。
事業計画と資本政策とをリンケージさせ、調達する金額・株価・期間など、逆算のファイナンス思考によって、イグジットまで最短で不必要なファイナンスをせずに推進していくことが、スタートアップ企業におけるCFO業務でしょう。
3.過去の調達時のミス
資金調達は、それぞれ調達手法によってコストが発生しています。
借入は利息という分かりやすい形である一方、株主資本の資本コストについては、多くの人がコストとして存在していることすら忘れてしまいます。
その割に、返済義務が無い資本は入れやすい・使いやすいと誤解され、借入金によって調達するときと比較して以下の3つのミスが目立ちます。
「ミス・プライシング=オーバーバリュエーション、ダウンバリュエーション」
「調達額のミス」
「投資家選定のミス」
こうしたミスによっては、次回以降のラウンド(資金調達)が困難を極めたり、もめ事の発端となることがあります。
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次回予告
次回のまとめ記事は「スタートアップ企業のファイナンス事情②」をお届けします。
お楽しみに。
―次回更新予定:6月24日(木曜日)