「企業価値」について考える②
【2023年1月更新】 前回に引き続き、「企業価値」について理解を深める記事をおまとめしています。
それでは早速ご紹介してまいります。
バイヤーズバリューとは?シナジー効果でより高い企業価値を創出
「バイヤーズバリュー」とは、売り手企業を買収することで期待できるシナジー効果を織り込んだ場合の企業価値と、売り手側の企業が単独で存在した場合の企業価値との差分を指します。
【例】
売り手企業単独での企業価値:1億円
M&Aによるシナジー効果で予想される企業価値:3億円
→この場合、バイヤーズバリューは2億円相当
バイヤーズバリューを加算した企業価値合計(この事例で言えば3億円)よりも売り手側の提示額が低いか高いかによって、買い手側は割安か割高かを判断しM&Aの成立・不成立に影響してきます。
■シナジー効果の評価
売り手企業側は、高い譲渡価格でM&Aを成約させたいため、できるだけ買い手企業の事業とシナジー効果が発揮しやすい旨を説明するでしょう。
買い手企業側は、売り手企業のどの事業が自社のどの部分と組み合わさってシナジーが起こり得るのかをできるだけ正確に見極める必要があります。
割安だから、割高だから、ではなく「企業価値の最大化へ向けた行為になるか否か」がM&Aの成否の本質的な論点であるという点に留意が必要です。
また、シナジー効果は確立された算出方法がありません。故に、企業間で情報が隠されたまま交渉が進められると、シナジー効果を算出しにくくなってしまいます。財務諸表などの公開されている資料だけでなく、機密事項などの外部には出さないような情報も出せるかどうかが重要です。
加えて、最終的な双方の合意については一概に価値を決めて売ってしまうのではなく、「どのような形態で譲渡をしていくことが双方の価値を最大化されていくのか」ということを重視していくべきと考えます。
■シナジー効果を評価してもらうための対策
ベンチャー企業など未上場企業へのM&Aの場合、財務諸表などの経営に関する資料が公開されていないことから、買い手企業側は経営状況に関する情報を入手することが難しい現状があります。
また、ベンチャー企業が取り組む事業は市場自体が未発達な新興市場であることが多く、確立された市場と比べて事業自体の将来性を評価しにくくなっています。
よって、買い手企業側は売り手であるベンチャー企業側の経営陣から提供される情報に頼ることになります。
市場自体が今後どれだけ成長するかなど、できるだけ分かりやすく伝えられるようにし、企業の経営状況についても明確に把握できるよう、財務諸表だけでなく中長期の経営計画等をしっかりと作成しておくことで、買い手企業側がシナジー効果をイメージし算出しやすくなります。
更に、買い手企業の顧客や設備等を活用したときのシナリオも準備できると、より買い手企業にとって買収後の将来像を描きやすくなることでしょう。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
事前対策で企業価値が下がるリスクを回避!
M&Aにおける価格交渉の際、買い手候補による調査(デューデリジェンス)によって企業価値が下がることが多々あります。そうならないために、押さえておくべきポイントを見ていきましょう。
■売却前に自社の適正な企業価値を把握
中小企業のM&Aにおいては、非上場株式の価格算定方法である純資産価額法や収益還元法による算定価格が譲渡価格のおおまかな目安となります。ただし、あくまでも目安であって、売り手と買い手の間で合意できた価格がその会社の譲渡価格ということになります。
売り手・買い手双方がそれぞれの合意できる価格帯についての見通しを持っていなければ、交渉は進展しません。売り手として価格の判断を下す際の根拠を得るために、企業価値を把握しておくことが重要です。
■価格が下がる要因があるかを把握し、事前に対策
価格交渉の際、買い手候補による調査で問題が出た場合、そもそも交渉自体が中止になる、又は売却価格が下がる要因となることも多々あります。
財務面:決算内容を操作したことがないか、税込み方式で決算書が作成されてないか
法務面:全従業員が社会保険へ加入できているか、継続的に係争案件を抱えていないか
などが買い手側にチェックされるポイントです。
また、リスクチェックをし対策をしているからこそ、M&Aの価格交渉において買い手に対し、より有利にかつスピーディーに進めていくことが可能になります。
これらを事前にチェックし把握することで、売却前までに対策を講じておくことがとても大切です。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
次回予告
次回のまとめ記事は「ベンチャー企業とM&A」についてお届けします。
お楽しみに。
―次回更新予定:7月5日(月曜日)