過去の事例から学ぶ“M&A”
今回はM&Aにおける過去の事例記事を2つピックアップしおまとめしています。
それでは早速ご紹介してまいります。
株式交換 ~出光興産と昭和シェル石油との経営統合~
2018年、出光興産の当時の経営陣は創業家の反対を押し切り、昭和シェルとの統合を果たしました。
本件での経営統合にあたり、両社が選択したスキームは株式交換というスキームです。
■株式交換
ある会社が別の会社の株式を取得するために、自社の株式を割り当てる手法。
本件で言えば、出光興産の株式を昭和シェル石油の株主に割り当て、代わりに出光興産は昭和シェル石油の株主から株式をもらうことになります。
出光興産の株式が1として、昭和シェルの株式が0.41でしたので、実質的には「出光による昭和シェルの買収」という形になります。
経営統合スキームで一旦は株式交換を実施しますが、その後のアクションで合併(吸収合併)をするということはよくあります。経営統合の次なる段階で合併も視野に入れているのかもしれません。
なお、株式交換は完全子会社化するに当たってのスキームですので、株式を一部だけ取得するという事は会社法上の株式交換のスキームの範囲外である点に注意が必要です。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
HISの挑戦とユニゾのTOB対抗策
2019年、HISは旧日本興業銀行系(現みずほ銀行)の不動産会社ユニゾホールディングスへのTOB(株式公開買付)を発表しました。
主事業こそ異なりますがホテル事業が重複事業であり、特にホテル事業は堅調に推移しているという点で共通点があったと見えます。
HIS側としては、TOBが成立すればホテル運営軒数が拡大し、宿泊特化型ホテルの国内運営会社として「トップ10入りする」と発表していました。
標的となったユニゾHDは「当社に対して何らの連絡もなく、一方的かつ突然に行われた」と発表しました。
■なぜユニゾなのか
2018年・2019年3月期のPBR(株価純資産倍率)は共に1倍を割り込んでおり、株式の市場での価値が、会社が清算してすべての財産を分配したと想定すると、その方が株主にとってメリットがある状態になってしまっていました。
また、ホテル事業において上場している会社が意外と少なく、買収が公には出来ない会社が多数であるのに対し、ユニゾは中堅規模にして上場をしているという点で非常に手が出しやすかったと言えます。
■ユニゾの対抗策
ユニゾは、HISの買収表明並びにTOBに対して、対抗馬として投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)を選び、フォートレスは関係会社を通じTOBを実施すると発表しました。
期間中の買付は最大100%の全株式であり、ユニゾホールディングスはTOBと共に上場廃止の道も視野に入れたのです。
■その後
その後、米投資ファンドのブラックストーン・グループがTOB意向を表明したりと一時買収合戦となりましたが、2020年にユニゾHDの従業員によるEBOが成立しました。上場企業でのEBOは日本初で、これと同時に上場廃止となりました。
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次回予告
次回からは数回に渡り、6月に実施しましたウェビナー内容についてご紹介したいと思います。
お楽しみに。
―次回更新予定:8月3日(火曜日)