事業承継とM&A①~オーナー企業~
【2023年1月更新】 今回は、「事業承継とM&A」についてオーナー企業の視点でおまとめしました。
早速ご紹介してまいります。
事業承継を検討中の企業オーナーに共通するポイント
特に中小企業の事業承継でよくあるお話しです。
売却相談・売却の意向がおありだと言うことでご訪問した場合でも、ほとんどのオーナーが「売るつもりがない」と仰るのです。
初めてお会いする見ず知らずのアドバイザリー会社に、安易にお話し出来ないお気持ちは十分に理解できます。そのため、ここは上手にお話を聞きだす必要があります。
・最近の事業上でのお悩みはどのようなことか。
・オーナーの家族構成は、どのような構成か。
など、1つずつ細かく質問していき、事業承継をお考えになっている背景に対して「仮説」を立てていきます。
「老後の資金も含め、相当額で手取り金額を最大化できないか」
「会社が次の会社に譲渡しても、うまく運営をし、大きくしてもらえそうか」
「金融機関からの債務が相当額有り、個人で入れている連帯保証だけでもなんとかならないか」
など、オーナーにとって最重要な論点が絞られていくと、ようやく事業承継とM&Aのお話へと進めます。オーナーが何にお悩みで、課題感をお感じで、どういった解決策とアプローチが取れるのか、をお話していくことになります。
それと同時に、次のステップに進むにあたり「価格」と「候補先」が大事なポイントとなってきます。
次のセクションでは、こちらをテーマにお話したいと思います。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
オーナー企業が事業承継を成功させるためには
さて、上記でお話しした“オーナーが事業承継で気になる2つのポイント”についてお話しします。
1つは「価格」、もう1つは「具体的な候補先」です。
自社の売却価額の目安については、弊社のBIZVALサイト「1分で分かる!企業価値診断」でも手軽に試算できますので気になる方は是非試算してみてください。
譲受候補先企業についてですが、“お金を出して買ってくれさえすればよい”という考えは100%失敗します。
従業員がこれから10~20年働いていくことを想像したときに、“環境変化に柔軟に対応していくことが出来るような会社か”など考える必要があるのです。
候補先企業へ実際に足を運び、膝を突き付け合わせ議論をしてみたりと、その譲受候補となる企業を知っていくことが非常に重要です。
成功のカギは“準備をすること”であり、
「具体的にどういった候補先であれば望ましいか」
「譲渡価額が伸びていくために、どこまで何をしておくべきか」
「譲渡価額が、実際に最後の場面で下がっていかないために、どんな備えをすべきか」
このようなことを事細かに描かない限り、企業価値の最大化には繋がっていきません。
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M&Aによる事業承継①
M&Aを活用し事業承継問題の解決を試みる場合、どのような会社が失敗しやすいのか、またはそもそもM&Aの活用に向いていないのかについてお話します。
1. オーナーの存在が偉大過ぎる企業
企業価値の成り立ちには、組織の存在が大きくかかわってきます。創業者が偉大過ぎることで組織的な機能が存在せず、何もかもがオーナー社長が居なければ決まらない、分からない、と言った企業の場合、組織としての構築が急務となり、買収側からすると、思っていたことと違っていたというようなことにもなりかねません。
周りにどのような参謀が居て、どんな組織構造で収益が成り立っているのか、は買収側がM&Aを検討する場合においては、チェックポイントともなります。
2. 従業員が不在で、ほとんど一人でやってきた企業(個人事業主)
譲受側として何を譲り受けるのか以前に、企業の価値のほぼすべてがオーナー経営者に紐づいてしまっているため、譲り受ける対象がありません。このようなケースはM&Aの対象になりにくいと言えます。
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M&Aによる事業承継②
M&Aの活用によってどのような事業承継の型があるのか、その型における留意点は何か、についてお話します。
株主と社長とが一致していれば、「所有と経営が一致」している状態で、これを「オーナー社長」と定義し、オーナーが100%株式を保有していると想定します。
この場合、一般的に取られる手法は「株式譲渡」です。
オーナーが保有している株式を、他の企業に買ってもらう(譲渡する)行為です。
オーナーの株式100%を買収会社が譲り受けることで、買収会社の100%子会社となります。
そして譲渡対価ですが、「金銭」をもらうことがほとんどだと思います。
仮に一番初めに10,000,000円で出資した会社が、100,000,000円で譲渡出来た場合、「株式譲渡益」に課税されることに留意して頂きたいです。
また、単純に類似業種比準価額と1株当たり純資産価額の併用割合を調整して終わりではなく、類似業種比準価額の計算で最後に乗ずる斟酌率も会社規模によって異なる点、「適正時価の把握」は細心の注意を払うべきと考えられます。
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M&Aによる事業承継③
事業承継において、業績不振の会社はM&Aは出来るのか、出来るとした場合にどういった手法(スキーム)になっていくのか、についてお話します。
■突発的な理由による業績不振の会社
一時的な不振の最中にM&Aを行うのではなく、少なくとも黒字の目途が立つ状況までもっていくだけでも、株価が見違えるほどよくなりますので、「売り時」を誤らなければ、事業承継として円滑にいくケースと言えます。
■短期的に業績不振である会社
戦略の見直しにより立て直しが見えている、または会社の中にある一事業部門は非常に業績が好調であるが、他の事業は総じて赤字であり、会社全体として赤字になってしまっている企業などは、スキーム次第で、事業承継を進めることが可能であると言えます。
■長期的に業績不振である会社
長期にわたり業績が振るわず、今後の営業キャッシュフローも黒字になる目途もつかず、財務での借り入れを起こしており、その返済も滞っている企業については、M&Aによる事業承継が非常に困難であるケースと言えます。
このような場合には、事業再生(ターンアラウンド)フェーズを経て、事業承継を進めていく必要性が高いと考えます。
《スキーム》
業績不振である理由も明確で、一事業部門は好調である、と言うケースでは、特定の事業部門のみを「事業譲渡」「会社分割」というスキームを用いることが多いです。
ただしここで留意すべきは、一部の事業/一事業部門のみ譲渡しているため、他の部門が残っていること、良好な事業部門を譲渡/売却してしまった状態で金融機関の借入返済ができる目安がたっているのかということです。
また、その後の対応によっては「詐害行為」とみなされ、事業譲渡という法的行為自体の取り消しができる権利が存在する点も、留意したいものです。
【この記事に関する詳しい解説記事はこちらです】
次回予告
次回のまとめ記事は「事業承継とM&A②~その他~」をお届けします。
お楽しみに。
―次回更新予定:6月14日(月曜日)