個人保証を外すということについて
【M&Aと個人保証】
中小企業がM&Aを推進していくにあたり、売り手側企業においては、金融機関からの借り入れがある場合、また、リース契約をしている場合に、往々にして直面する課題が、
・オーナーの個人保証(会社に対する連帯保証)
でしょう。
何の準備もなく、また適当なM&Aの会社に依頼してしまうと、本件が抜け落ちしてしまい、M&A完了後も、個人保証が入ったまま、ということが生じてしまいます。
本稿では、前回の話題も踏まえつつ、対策をお話しできればと思います。
【個人保証と金融庁】
実は、個人保証に関するガイドライン、正式には
「経営者保証に関するガイドライン」
が金融庁から発表されております。
・平成25年12月9日公表
・令和元年12月24日公表
のものが存在しますが、後者のものを見ることをお勧めします。
この中に記載のある以下を確認してみてください。
・前経営者は、実質的な経営権・支配権を保有しているといった特別の事情がない限り、いわゆる第三者に該当する可能性がある。令和2年4月1日からの改正民法の施行により、第三者保証の利用が制限されることや、金融機関においては、経営者以外の第三者保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立が求められていることを踏まえて、保証契約の適切な見直しを検討することが求められる。
・ 保証契約の見直しを検討した上で、前経営者に対して引き続き保証契約を求める場合には、前経営者の株式保有状況(議決権の過半数を保有しているか等)、代表権の有無、実質的な経営権・支配権の有無、既存債権の保全状況、法人の資産・収益力による借入返済能力等を勘案して、保証の必要性を慎重に検討することが必要である。特に、取締役等の役員ではなく、議決権の過半数を有する株主等でもない前経営者に対し、止むを得ず保証の継続を求める場合には、より慎重な検討が求められる。
・ また、本特則第2項(4)のとおり、具体的に説明することが必要であるほか、前経営者の経営関与の状況等、個別の背景等を考慮し、一定期間ごと又はその背景等に応じた必要なタイミングで、保証契約の見直しを行うことが求められる(根保証契約についても同様)。
以上の個所の記載の通り、第三者に該当した売主は、保証を外せる機会が与えられていると読み解くことができます。
【金融機関と個人保証】
さて、金融庁でのガイドラインは出ているものの、実はこのガイドラインをよくわかっていない金融機関担当者が多くいらっしゃることも事実です。
我々の支援時に、個人保証を同時に外す場合、金融機関に同席の上、当該ガイドラインを持参し、説明します。
さらに、活用実績集も、同様に出ており、こちらで説明を重ね、最後に
「金融庁 監督局総務課監督調査室」
の担当官や、金融機関の担当者の上席、責任者に対する表明を行い、交渉をしたうえで、最終的な個人保証のあるべき姿を確認の上、個人保証を外すということをご支援しています。
他方、買収側にこの責務を負わせる、という交渉もあり得ることは事実です。
したがって、誰が労力をかけるのか、については、その時々の交渉のパワーバランスで変わってきます。
いまだに、金融機関は買い手側に連帯保証を移そうとする場面もありますが、それも原則としていかがなものかと思われます。
【まとめ】
いかがでしたでしょうか。
個人保証とM&Aは実は切っても切れない関係にありますが、なかなかこのガイドラインの存在が知らておらず、残したままになってしまう場面、ことも多々見受けられます。
事後的にご相談があった場合にも、弊社は金融機関との交渉をご支援いたしております。
本稿をご覧いただき、ご不安などがありましたら、お気軽にお問い合わせください。