M&Aの際、会社の借入金や個人の連帯保証はどうなるのか?
2020年10月アップデート
「個人保証を外すということについて」
会社の借入金は、通常、代表者が連帯保証しているため代表が代われば、事業を引き継いだ新たな代表が連帯保証も引き継ぐことになります。後継者へ引く継ぐ場合は、後継者が保証も引き継ぐことを承知できるかがポイントになります。M&Aの場合、そのスキームによって異なりますが、中小企業のM&Aで最も多い株式譲渡と事業譲渡の場合について説明します。
株式譲渡の場合、借入金などの債務は買い手側に引き継がれる
事業譲渡の場合は、M&A実行後、売却代金を原資に売り手企業のオーナーの責任で借入金を返済します。
株式譲渡の場合、法人格そのものを譲渡するため、法人が負っている借入金も買い手へそのまま引き継がれることになります。また、借入金だけではなく、支払手形や買掛金、未払金といった仕入上の債務、簿外債務となっているリース債務についても、そのまま買い手へ引き継がれることになります。
オーナーによる個人の連帯保証の解除は重要
通常、事業譲渡の場合は金融機関からの借入を引き受けることはないので、ここでは株式譲渡の場合について説明します。
M&Aで株式譲渡をした場合、借入金などの債務は買い手へ自動的に引き継がれるわけではありません。そもそも中小企業が金融機関から借入を行う場合、オーナーが個人として連帯保証人となっていることがほとんどです。そのため個人資産(自宅の不動産など)を担保として供していることもあります。
これら事業上の負債のために、オーナーが負っている連帯保証や差し出している個人資産担保は、M&Aによる株式譲渡に伴い買い手側である新株主に連帯保証人の書き換えを行わなければなりません。
ただし、この連帯保証人の書き換え申請は、株式譲渡と同時にできるものではなく、代表者変更登記が終わり、新しい登記簿謄本が取得できるようになって初めて申請することができます。そのため、時間もかかるなどの理由から、実務的には株式譲渡と同時に、新株主側が金融機関に一括返済するというケースで解除が図られます。
もしくは、売り手と買い手とで「基本合意」を締結、又は「株式譲渡契約」を締結した段階で、予め買い手企業が金融機関に、株式譲渡後における解除についての交渉を行っておき、解除に関する諸条件を内諾していく、といった手段も採られる事があります。
忘れられがちなのが、取引先との間で締結している取引基本契約です。取引基本契約の中で、個人として連帯保証を負っているケースがないか、過去に締結した様々な契約を見返し、譲渡と同時にすべての個人保証について変更するよう注意してください。
おわりに
このように買い手側に連帯保証人の書き換えを行い、担保提供を解除する手続きを取りさえすれば、売り手の企業オーナーは借金の重苦から解放され、安心して第二の人生を過ごすことができるのです。