大塚家具の行く末を考える
背水の陣?
さて、既に報道がありましたが、本メディアでも何度か触れてきた大塚家具が、
・第三者割当増資2019年6月末までに 30億円
・新株予約権の行使枠 2022年と2024年までに 38億円
と言うスキームの中で、資金援助が決まったそうです。
過去の大塚家具の記事
経営権にこだわり続けた大塚久美子社長ですが、画像の通り、新株発行後、新株予約権が行使された後の世界では、大塚久美子氏の出処進退はもはや御自身ではどうにもならないほど影響力も薄まり、すなわち「最後の舞台としての腹を決めた」と見て取れます。
(出所)株式会社ハイラインズとの業務提携および第三者割当増資のお知らせ(サマリー) より
新たな株主と大塚久美子体制の回復までの猶予期間
新たな筆頭株主の米系ファンドEastmore Global, Ltdの正体は、「オルタナティブ・ファンド」とのことで、上場株式、いわゆる伝統的なアセット=大塚家具に投資をする、ということ自体、解せない投資であり、単純に、今回のスキームを眺めていると以下のようにハイラインズが今後支配株主になるような強調した買収であったのではないか、と推察します。
(ハイラインズが一定の業績回復まで大塚家具を実質の筆頭株主として支援、業績回復・株価回復後に、Eastmore Global, Ltdは今回の割当て株式を「優先的に」ハイラインへの譲渡する(ファースト・リフューザル・ライト=先買権)スキームではないか?)
新株予約権の割当先には、ハイラインズ本体並びに代表者である陳氏が記載されており、
・実質的には32.88%
の議決権をハイラインズグループが握りますが、更に議決権ベースで言えば自己株式を除き、実は
・「3分の1超」をハイラインズグループが支配することになる
ため、取締役の選任・解任決議がハイラインズグループで決することができます。
つまり、大塚久美子社長がご自身でどうこうできる、という状況はあと期間が限定されていると言えます。
(新株予約権の行使期間が2022年、2024年と長期になっていますが、ここまで社長を任せる、ということは現実的にはあり得ないと考えます。基本的には1年が猶予でしょう。)
このような状況を許容せざるを得なかったこと自体、1年内の大塚体制での業績回復(30億円の増資)が出来ない場合、大塚体制は終焉を迎え、その後に新株予約権を行使し、ハイラインズグループとして大塚家具が再出発、となるのではないでしょうか。
キャッシュフローから見る破綻シナリオ
というのも、直近の決算で
・営業キャッシュフロー -47億円(17年12月期) -26億円(18年12月期)
と創業すればするほど、お金が出ていってしまっている現状であり、現在の売上高では到底、固定費も賄えていない現状です。
つまり、38億円の増資は、足元の資金繰りで1年間で燃え尽きてしまうレベルのものでしかなく、抜本的な構造改革に伴う
「構造改革投資資金」
はもはや手元に残っている現預金26億円あまりしかないのが現状です。
新規投資も抑制される、売上高が急激な回復が見込めない中、1年で立て直しは到底困難と考えられ、シナリオとしては、
「分かったうえで、それでも最後の1年としてやってみる」
というのが今回のスキームであったと考えられます。
ちなみに、すでに大塚家具の資産の売却可能性があるものは、ほぼ売却が済んでしまい、大きな資産であった
固定資産=主に土地・建物
に至っては、この1年で、28億円から2億円弱まで、切り売りが済んでいます。
虎の子も売却し、経営権を譲る相手が国内では見つからず、海外として抱き合わせでついてきたような形の、オルタナティブファンドと、中国系(越境EC)ECサイト会社に経営を委ねて行かざるを得なかった、というのが現状でしょう。
株価に至っては、2015年3月3日に大塚久美子体制のもと、
・1株 2,488円
をつけていましたが、2019年2月18日現在は
・1株 346円
と実に86%近く株価が下落した計算になります。
また、ここに至っての第三者割当増資の発行価額は、なんと
290.11円と
現在の市場価額のさらに16%も低い価額での発行となります。
筆者はこういった一連の行動が更に、市場の期待を裏切っていくのではないか、と考えます。
まとめ
いずれにしても、経営を立て直すと言ってから、ことごとく当てが外れてきた大塚家具の現経営体制ですが、ハイラインズグループにおいては、どこまで大塚家具にうま味があるのか、は正直不明です。
優秀なバイヤーなども続々と辞めてしまっている、というような雑誌での記事も見かけており、そもそも今の大塚家具の強みが見えてきません。
ハイラインズグループの出資が、いったんは紙切れに等しくなるような日が来てしまうのかもしれません。