ワークスアプリケーションズの身売り~赤字決算公告から見える状況~
ワークスアプリケーションズ筆頭株主のACAグループが売却意向表明(ベインキャピタルが買収へ)
(2019/8/1 UP)
最新記事では、ワークスアプリケーションズがベインキャピタルに対して、身売りを発表したことについて触れています。
詳しくはこちらからご覧ください。
ワークスアプリケーションズの身売り~会社分割による事業売却~~
弊社のメディア赤字企業の背景には何があるのか?①~RIZAP・ワークスアプリケーションズからの考察~でも述べておりましたが、ついに、ワークスアプリケーションズ(システム開発会社 HUEなど最先端のAI技術を駆使したERPパッケージの国内ITベンダー。牧野社長の独特な世界観や、社員を1000人大量採用する、働き甲斐のある会社No1を受賞するなどで話題になった会社)が経営が立ち行かなくなったようです。
もともとワークスアプリケーションズは上場企業でしたが、HUE(ヒュー)など新たなシステム開発へ向けて市場に上場しているよりも、非上場化することにより、独自のシステム投資や人材投資によってさらなる成長ができる、と踏んだうえで非上場化しました。
その時に、市場で売買されていた株式を、特定の個人株主や、投資ファンド、現在の経営陣などによってバイアウト(株式を買い集め、非上場化)したのですが、直近で資金難に陥った時に、第三者割当増資等で再投資をしたことが決算公告及び同社のニュースから読み取れます。
1.2017年11月16日ニュース
総額 50 億円の第三者割当による普通株式発行の引受及び WAP(ワークスアプリケーションズのこと) の元主要株主からの株式譲受について完了
2.2018年7月4日ニュース
107億円の資金調達・資本増強
(参考URL)
1.第三者割当増資の引受け及び株式譲受による株式会社ワークスアプリケーションズの過半数株式取得の完了について~日本企業の競争力に資する革新的次世代 ERP「HUE」の開発推進に向けた支援~
2.資本増強のお知らせ
つまり8か月の間に157億円の資金調達をしたということです。この資金が同時間軸の中で、一気に使い切ってしまうような状態でした。
決算公告からも同様の内容が読み取れます。
平成29年資本金36億円(資本剰余金 合計160億円)
平成30年資本金114億円(資本剰余金 合計317億円)
157億円どこからか資金調達をした=第三者割当増資をした
ということが読みとれます。
これは全てACAグループであることは、上記のニュースからも明らかです。
ちなみに、2011年1月にMBO(非上場化)し、経済紙などから、ACAグループが株式を譲り受けた際の、譲渡をした株主は国内の金融機関系の投資ファンド「ポラリスキャピタル」であったことが分かっています。
ここで重要なのは、
・ファンドには投資期間が設定されている(ファンドの運用期間ともリンク)
ことでしょう。
2011年から2017年で実に6年も間があり、投資期間的に、エンドがきた、その際に、他の譲受先としてACAグループが選定された、とみるのが、正しい見方でしょう。
出所:ワークスアプリケーションズ第21期決算公告、第22期決算公告
ワークスアプリケーションズの資金繰り悪化、赤字の背景
赤字企業の背景には何があるのか?①~RIZAP・ワークスアプリケーションズからの考察~でも述べていますが、結論
・投資回収ができなかった
ということにつきます。
下図のように平成30年度の
利益剰余金ー149億円
当期純損失ー179億円
と完全に事業が立ち行かなくなっています。
また、兼松エレクトロニクス、古河電工などから訴訟を受けており、売上高が446億円から398億円と約50億円近く落ち込んでいることからも、システム納期の遅延等を起こすHUE並びにワークスアプリケーションズ自体が、ERP市場における信用を失った結果が見て取れるのではないでしょうか。
当初非上場化における目的であった、新たな投資である、
・システム開発投資
・人財投資
の双方がうまくいかず、肝いりであった新システムHUE(ヒュー)は、SAP(エスエーピー)のSAP HANAに対抗して開発・販売したものであったものの、上記の通り、販売がうまくいかなかなくなった、その販売を支える人員、開発人員を先行投資していたため、
・営業キャッシュフローは赤字
・投資キャッシュフローの回収ができない
あわててACAグループが追加の増資で
・財務キャッシュフローでの補填
をしたものの、それでもうまくいかなかった、ということが分かります。
ワークスアプリケーションズ決算公告より弊社作成
まとめ
まとめとしましては、事業環境を見誤った、ということに尽きるかと思います。
クラウドの環境、SaaS環境がこれだけ日進月歩の中、重厚長大な開発(とはいえ彼らの開発方式はアジャイル開発なのでPDCAが高速で回る、というのが売りでしたが)は、
・地合いに合わず惨敗した
ということでしょう。
市場に上場していた時であれば、こういった地合いを読みつつ、今後の投資を、ということがガバナンスで効いたかもしれませんが、非上場化したことで、結果的に事業環境の速度についていけず、このような
・投資の失敗
に結びついたのだと考察できます。
筆頭株主であるACAグループはM&Aにより売却候補先を2月までに決定していくことをほのめかしているようですが、果たしてこの状態のワークスアプリケーションズを買収する会社があるのか、今後も注視したいと思います。