赤字企業の背景には何があるのか?①~RIZAP・ワークスアプリケーションズからの考察~
企業の危機が訪れるまで
今回は、昨日のRIZAP(ライザップ)グループの赤字報道に端を発し、ワークスアプリケーションズも引き合いに出し「赤字企業」の赤字が生れるその背景についてお話したいと思います。
(2019/8/1Up )
最新記事では、ワークスアプリケーションズがベインキャピタルに対して、身売りを発表したことについて触れています。
ワークスアプリケーションズの身売り~会社分割による事業売却~~
下記の記事も合わせてお読みください。
ワークスアプリケーションズの身売り~赤字決算公告から見える状況~
おさらい
さて、昨日の記事の通り、RIZAP(ライザップ)グループの赤字はキャッシュフロー的にも、利益の見た目的にも70-80億円の赤字であることが分かりました。
また、投資も行っていますので、上半期の6か月での現金の流出が170億円相当であったこともご説明しました。
本業では資金を賄いきれず、市場において広く投資家からお金を集め340億円程度の増資をしました。
それにも関わらず、昨日はストップ安となり、2018年11月15日の終値は年初来安値を更新し、また年初来高値からは70%近くも下落、市場の信頼を大きく失う結果となりました。
こうした状況下では、同じように営業キャッシュ・フローが赤字が続くようでは、金融機関からの資金援助もあてにできず、なおかつ市場からの資金調達もままならないことは火を見るよりも明らかです。
経営再建に際して「失敗の理由」を考える
もともとRIZAPは、買収してきた赤字会社をRIZAP傘下にて経営再建を進めていくことにコミットしていました。
しかしながら、そうは上手くいかず、再建は断念し、売却するとの発表が出ていました。
通常は経営が赤字になっていくことから、破綻していくにはそれなりに時間の経過がかかりますが、営業上のキャッシュフローの赤字が止まらない(血が流れていくような状態を指し、流血している、などとも言われます)、ような場合、何らかの止血が必要になってきます。
止血に至るまで、止血の打ち手を講じる前に、
「そもそも赤字の理由はなんであったのか」
そこを考える必要があります。
赤字の理由(巨額投資の失敗)
経営戦略上の失敗、についてみてみたいと思います。
例えば、今回のRIZAP(ライザップ)グループのように、「M&Aというアクションで会社を買収してきた」、この行為自体を「投資」と言いましょう。
「投資」に対しては、常に「リターン」が得られなければなりません。
また、会社は基本的には常に、複数の代替的な投資案件を抱えているものです。
最適な投資を行るのか、については、経営のセンスが問われますが、一定の基準は必要・必須です。
例えば、RIZAPが買収したCD・DVD・書籍販売店「新星堂」などを展開するワンダーコーポレーション、化粧品販売のジャパンゲートウェイ、フリーペーパー制作のサンケイリビング新聞社とぱどなどは、投資をしたにもかかわらず、赤字でした。
つまり、これらはM&Aというアクションで会社に「投資」したのですが、「失敗」したのです。
今回は、M&Aでしたが、大規模な人材採用を推進し、大きく赤字を出した企業が直近あります。
2015年くらいから数千人単位での採用を目標に活動をしてきた会社に「ワークスアプリケーションズ」というシステム開発会社があります。就職活動の人気ランキングでは1位になるなどで有名ですが、この会社においての大規模投資は「システム開発費用」のほか、「人財」といえます。
しかしながら、公表しているベースですが、実に当期純損失で「180億円」もの赤字を計上しています。
また、通常、人件費は、営業利益のベースよりも上の「売上原価」または「販売費及び一般管理費(通称、販管費)」に計上されているため、このラインで赤字(営業損失98億円)と言うことは、投資をした人員やシステムに対して「回収が出来ていない状況」となります。
経常損失で100億円も計上しているところを見ますと、資金繰りも「火の車」になっている様子も想像されます。
このように、赤字になる、すなわち経営戦略上の誤りとして、
「目標達成のために、手段として何らかの「投資行為」をしたものの、施策として間違っていた」
という場合に、経営の危機が訪れます。
(また、目標自体が誤っている場合もあります。)
さらには、今回のRIZAPや紹介したワークスアプリケーションズのように、当然のことながら投資額が巨額であればあるほど、失敗した場合のロス・影響も大きくなります。
投資を実施するに当たっては、当然会社ごとの「投資判断基準」が存在するはずですし、
・何故
・何に対して
・幾ら投資し
・いつまでに
・どれくらい
・どのような手段
で回収していくことができるかを基準にする必要があります。
この一連の流れの「妙を見極められない」、「基準を定常的に無視」することで、企業経営の危機が訪れるのです。
まとめ
今回は、投資の失敗、の例として、
・M&Aによる投資
・システム投資
・人材採用による投資
といった、経営資源である人、もの、カネ、情報のいずれかのリソースへの投資、または企業自体の買収といった投資について、失敗することにより、経営危機、赤字が生じる、と話しました。
筆者の感覚としては、一見して派手に見える会社は、そのパフォーマンスがうまく、会社の一時的な宣伝効果、ブランディングがうまくみえるのですが、その派手さを維持することなど、目先のことに集中してしまい、継続的、持続的なブランド維持ができず、崩壊していくことが多いように思います。
会社の価値を正しく把握することから、その価値をなぜ、どう、いくら伸ばしていくのか、初めてそこで目標と戦略の適合があると考えています。
次回は、スルガ銀行などの突発的赤字(会社の組織としては仕組まれ、なるべくしてなったものではあるものの)など、一時的な不祥事や外部環境を理由とした赤字に対して、考察してみたいと思います。