ワークスアプリケーションズの身売り~会社分割による事業売却~
ワークスアプリケーションズの赤字とその後
(譲渡完了の記事はこちらから)
ワークスアプリケーションズの譲渡完了
赤字により経営難に陥っていたワークスアプリケーションズが2019年6月21日「会社分割(吸収分割)及び新設会社株式の譲渡に関するお知らせ」を発表しました。
どのようなスキームだったのでしょうか。
ワークスアプリケーションズのとった選択
スキームとしては、会社分割をした上で、収益源の人事システムなどHR事業を米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡すると発表したのです。
(以下、ワークスアプリケーションズWEBサイト「ニュース」より一部引用)
当社は、令和元年6月20日開催の取締役会において、当社のHR領域(人事シリーズ及びHR Suiteプロダクト)に関連する事業及び関連子会社(以下、「HR事業」)を、令和元年8月1日を効力発生日とする会社分割(吸収分割)により、当社の完全子会社である新設会社に承継させた上で、同日当該新設会社の発行済株式の全部をBain Capital Private Equity, LP(そのグループを含み、以下、「ベインキャピタル」)が投資助言を行うファンドが間接的に運営管理するSPC(特別目的会社)(以下、本買主)に譲渡することを決議いたしましたのでお知らせいたします。
(以上)
吸収分割というスキームは、事業の売却によって、相手方に法人に関連する債権債務を包括的に移転するスキームで様々な権利関係が存在する大規模な企業が事業を譲り渡す際にはよく使われるスキームです。
いったん、ワークスアプリケーションズが新たに会社を1つ作ります。
その会社に対して、HR事業をまるごと移転させて、その会社の株式をベインキャピタルに株式譲渡する、というスキームです。
吸収分割でそのままベインキャピタルが設立するSPC(Special Purpose Company=特定目的会社)にという手もあったかと思いますが、
ワークスアプリケーションズが100%子会社を1つ新たに設立する、というスキームをとり、その後、その箱に吸収分割させる、というスキームを取ったのは、理由があると考えます。
例えば、他にも交渉相手はいる中で、既に話し合いとして
・HR事業だけならば欲しいという会社が複数存在しており、仮にベインキャピタルとの交渉が破断になったとしても他社に対して直ぐに交渉が可能な状態にしておける
などです。
プレスリリースで譲渡目的による、ということで出してしまいましたので、何かあった時に、手元に抱えておくには、税務上のリスクもあまりにも大きいため、相当程度確度が高い状態である、ということは予想されます。
(組織再編行為とみなされない「非適格吸収分割」となるため)
譲渡金額は
約1,000億円
とみられ、本メディアでもたびたび、赤字に関して採り上げてきたとおり、年明けからの身売り交渉で出ていた筆頭株主であるACAグループといったファンドが主導していただけに、満足のいく金額が出るのか、がイシューでした。
最高峰のPEファンド、ベインキャピタルが買収するとなったことについては多少驚きです。
まとめ
今後のワークスアプリケーションズは当面の資金確保はできた、という見え方もあるかもしれません。
しかしながら、懸念点がまだ下記の4つほどあります。
・譲渡の実行される8月までまだ時間があり、予断を許さない状況は何ら変わりがないこと(買収に関して、ノックアウトファクター、いわゆる買収が出来ないほどのネガティブな要素が出てきてしまうなど。M&Aではよくある話です。)
・HUEといった新製品を残し、旧来型の人事・労務系システム周り(HR業務)の譲渡をすることで、ノウハウ、特にどういった古参の人財が流出してしまうのか(新卒大量採用の方が分割会社に残ったとした場合、営業力含め、著しい企業価値の毀損が起きていないか)
・HUEに関しては、システムローンチ後も問題が絶えず、今後の仕組みであるため、今後の事業計画に明るい兆しが見えていないこと
・株主であるACAグループは大株主であり、実行しようと思えば、「配当として」などで、株主に還元させることが可能であり、会社側に資金が残らない可能性があること
これらの問題が横たわっており、一朝一夕に解決するものではないと思われます。
今回は経営自体の再建ではなく、資金の確保であり、しかも限定的である点から、もしかすると、と思ってしまうのが、
「新システムHUEなどを残す分割会社については、経営再建をあきらめ、実はベインキャピタル傘下に入るHR業務にほとんどの主力の人、プロダクトが移転する」
のではないか、とも見て取れました。
いずれにしても、今後もやはり目が離せないワークスアプリケーションズでしょう。
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