島忠の憂鬱② ~ニトリの本気~
【ニトリのTOB価格の発表】
「島忠の憂鬱」の記事でも記載した島忠へのDCMホールディングスによるTOBだが失敗の公算が大きくなってきました。
以下、日経新聞からの引用となります。
家具・日用品大手のニトリホールディングス(HD)は29日、ホームセンター大手の島忠に株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。1株あたりの買い付け価格は5,500円で、11月中旬をめどに始める。島忠に対してはDCMホールディングスが1株4,200円でTOBを実施している。ニトリHDの買い付け価格はこれを3割上回り、買収総額は約2,100億円になる。
29日午後に記者会見を開いて似鳥昭雄会長が説明する。1株5,500円の取得価格は島忠株の上場来高値(5,193円)を超える水準となる。
(出所:2020/10/29 15:52ニトリHD、島忠へTOB 1株5,500円で 日本経済新聞デジタル版より)
DCMホールディングスの提示したTOB価格は4,200円、島忠としては、上場来高値(5193円)を超える水準でニトリからの買収提案を受けたとのことです。
【経営陣の茶番】
これはどういうことを意味しているのでしょうか。
そう、経営陣が度重なるファンドからの圧力に屈し、株主対応、株主への説明責任から逃げ、業界1位のDCMホールディングスに自身たちの保身に走って、安易に割安な株価を受け入れてTOBを始めた、ということになり、罪は大きいものと考えられます。
再び日経新聞の引用ですが、
島忠の経営陣はDCM側の買収提案に賛同しており、ニトリHDの提案内容を受け入れるかがポイントになる。DCMはニトリHDの提案を受けて買収価格を引き上げるかを判断することになる。
(出所:2020/10/29 15:52ニトリHD、島忠へTOB 1株5,500円で 日本経済新聞デジタル版より)
ここで受け入れるか、否かで、本質的には島忠経営陣のスタンスの取り方が自己保身であったかが世にさらされていくこととなります。
当然、DCMホールディングスにお世話になろうとほくそ笑んでいたところに、踵を返して、もろ手を挙げて、ニトリさま、というわけにはいかないでしょうし、他方、DCMホールディングスに対する仁義にもとらないようなビヘイビアが島忠経営陣には求められるのですが、果たして、どのような結果になるのか、注視したいと思います。
【まとめ】
先日触れましたように、DCMホールディングスに対するTOBに経営陣が賛同し、株式公開買い付け契約やそれに準じるものに、
・フィデユーシャリー・アウト(FO)条項
が入っていたか否か、が争点になります。
DCMホールディングスに対して、申し訳ございません、では当然済む話ではありませんので、今回のようなケースでは、TOBをする側、される側にとっても、契約でしっかりと、より魅力的な提案があった時には、違約金の支払いを求める、逆に支払ってでも株主からの代表訴訟、訴追リスクを回避するためにいくらまでならば支払ってでも、他の候補者に行くのか、は難しいとは言え、判断しておくべきポイントとなります。
このような契約条項の存在を知らずして、アドバイザリー業務は不可能だと思った、そんな案件の好事例と言えると思います。