スタートアップの受難 上場中止相次ぐ
新型コロナの影響による上場中止
今回は、新型コロナの影響で上場を中止したスタートアップ企業(東証マザーズ以外も掲載)についてみていきたいと思います。
3月18日から4月30日までの間に、上場を予定しつつ、中止を発表した企業の数は
・18社
に上ります。
このうち、東京都を含めたロックダウン前、と首都閉鎖(ロックダウン)後で数値に変化があるとすると、
・4月7日ー9日
において5社も上場中止を決定しているところを見ると、経済活動が大きく停止する恐れがある首都閉鎖(ロックダウン)の影響が、企業活動、株価に与える影響が甚大である、読めない、ということが中止の背景であったことが示唆されているのではないかと思います。
どれくらいの規模の時価総額なのか?
4月17日以降になりますと、わずか2週間の間に8社が上場の中止を発表しました。
合計674.3億円、平均137.07億円の時価総額
が市場で取り扱われる機会を失ったことになりました。
なお、No3のウィングアーク1st社は、2019年3月13日に上場予定でしたが、まさに、ちょうど1年前にも、上場中止を決定しています。興味深いので、2回の上場中止のコメントを掲載しておきたいと思います。
(以下、会社公表用資料より抜粋)
1.2019年上場中止決定時
2019年1月31日及び2019年2月25日開催の当社取締役会において、当社普通株式の東京証券取引所への上場に伴う株式売出しについて承認いたしましたが、2019年3月4日開催の当社取締役会において、最近の株式市場の動向等諸般の事情を総合的に勘案し、当該株式売出しの中止を承認し、それに伴い当社普通株式の東京証券取引所への上場申請を取り下げることを決議いたしましたので、お知らせいたします。なお、今後の上場手続きの再開につきましては、株式市場の動向等を見極めたうえで、引き続き検討してまいります。
2.2020年上場中止決定時
2020年2月20日開催の当社取締役会において、当社普通株式の東京証券取引所への上場に伴う株式売出しについて承認いたしましたが、2020年3月10日開催の当社取締役会において、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大及び原油価格の急落等を受けた最近の株式市場の動向等諸般の事情を総合的に勘案し、当該株式売出しの中止を承認し、それに伴い当社普通株式の東京証券取引所への上場申請を取り下げることを決議いたしましたので、お知らせいたします。なお、今後の上場手続きの再開につきましては、株式市場の動向等を見極めたうえで、引き続き検討してまいります。
2019年にはなかった表現として2020年には
「新型コロナウィルス」
についての言及がされています。
ここまで来ますと、同社はかなりの上場における機会損失を抱えてしまっているように思えますが、この18社の中では異色の上場中止であったと思われますが、他社については、まさに新型コロナウィルスの影響を受けたための上場中止と言えるでしょう。
まとめ
日本取引所グループの判断次第と思われますが、基本的には市場の安定化や市場における流動性を鑑みて、1年間における上場企業承認、上場の企業数が緩和されることはないと推察されます。
ということは、上場予備群の中でも上場が決定していた会社から、が上場における割当てが順当であることを鑑みますと、2021年、2022年における上場ターゲットであった企業への影響は避けられないものになると想定されます。
こうなりますと、スタートアップ企業として、留意しなければならないのは、
・ファンドの償還期限
でしょう。
これまで無尽蔵にベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタルが資金供給をしてきていましたが、
その供給能力も制限されることは想定され、加えて、上場に向かっての動きが鈍化するとなれば、
スタートアップ企業にとっては正にダブルパンチ、まさか資金を調達した時には思っていなかった
・ファンドとの償還条件における交渉
も視野に入れて経営をしていく必要が出てきたのではないでしょうか。
その時に手元資金があるスタートアップ企業は少ないと思われます。
このときにどのような選択をすべきか、スタートアップ企業における次回のメディアで触れてみたいと思います。