M&Aについての考察①
【2023年1月更新】 M&Aの5W2Hを考える
M&Aにおいても、お馴染みの5W2Hは重要なポイントとなります。
M&A戦略はもちろん、どのスキームを採るか、ストラクチャリングをどうするのか、はこの5W2Hが重要になってきます。
今回は、5W2Hのうち、
・Who
に焦点を当てて書いてみたいと思います。
法人区分による経営権の移動
M&AのWho(誰)について
M&AにおけるWho、つまりM&Aにおける主体者を指します。
ここでは、M&Aが
「買収(買う側)」
と
「被買収者(買われる側)」
の2者しか存在していない前提で考察します。
買うか、買われるか、しかないと言われると日本人の方は、少し違和感をお持ちになる方もいらっしゃるようなのですが、M&Aの前提は、買うか、買われるか、それ以上でもそれ以外でもありません。
ここで、買収者、被買収者と成り得るのは、法人か自然人のいずれかになります。
法人は、一般的には株式会社が採り上げられますが、法人には
・学校法人
・医療法人
・社会福祉法人
など多様な「法人」が存在しています。そういえば、監査法人も法人ですし、●●財団法人というような財団も法人です。
もう少し馴染みのありそうなところでいきますと「会社」という形では、
・合同会社
・合名会社
・合資会社
という会社の形態(上記3つを持分会社、と呼ぶこともあります。)もあります。
これらは全て「法人」であり、会社としてM&A(合併と買収)の当事者となることができます。
ここで、なぜ最初に
・Who
から始めているのか、というと、この法人の形態や、法人における会社の種類によっては、採用すべきM&Aスキーム(手法)、例えば、株式譲渡なのか、吸収合併なのか、事業譲渡なのか、持分の譲渡なのか、はたまた理事会における理事長職を譲る(退職金として支払うなど)ことで経営権の実態を譲る、というように全くもってやり方が変わってくるのです。
簡単に説明しますと、上記の説明で出てきた法人区分で、
・会社
と
・それ以外
とでまずは区分してみると良いでしょう。
それ以外の代表例で出していた
・学校法人
・医療法人
・社会福祉法人
などは、基本的には、理事長と理事からなる「理事会」により運営されており、この理事会の権利を抑えることが実質的に経営権を支配する、ということになります。
通常の皆さんが想像するM&Aからすると、少し違和感を感じるかもしれませんが、理事長の職を譲る、ということに対して、退職金や退職金相当のお金を支払うことで、その地位を譲り受ける、ということが可能になります。
この場合の、理事長や理事においては、法人ではなく、「自然人(人)」がなる必要が求められます。たとえば医療法人であれば、医師である必要などがありためです。
他方、会社においては、
・株式会社
は株式の譲渡、
・持分会社(合同、合名、合資)
は持分の譲渡、
という取引行為によって、会社の経営権を渡すことが可能です。
法人のことを考えますと、経営権の取得については、上記以外では、基本的には、
・合併
であれば、基本的に、医療法人でも、学校法人でも、株式会社でも認められる組織法的な行為となります。
社会福祉法人などは、公共性が高い観点もあり、
「理事長が良い思いをする」
ようなことに倫理上の反感もあり、退職金を受け取ることについて、糾弾されるようなこともあります。
(大阪府阪南市で老人ホームを運営する社会福祉法人の理事長職が約1億6千万円で、元理事長から阪南市議の男性(60)に譲渡されていたことが21日までに、所管する阪南市への取材で分かった。法人が売買されていた格好で、問題視した市が指導監査を通じて実態調査を進めていた、というような事案もあります。)
このようなことを避けるためにも、経営権の取得が目的であれば、上記の会社以外の法人は、
・合併
または
・一部の事業の譲渡(譲受)
によって、法人支配者を実質的に変更する、ということになります。
まとめ
今回から、M&Aでも5W2Hが使える、というお話をすることにしましたが、第1回目は、
・Who
M&Aにおける主体者である、買収者と被買収者で、何が対象になるのかによって、スキームが異なってくる、ということをご説明しました。
単純に株式譲渡しか知らない、ではすまされないほどM&Aは馴染み深くなってきています。
信頼のできるアドバイザーや相談相手を見抜くためにも、どういった形態のM&Aまでを手掛けているのか、確認してみたほうが良いでしょう。