LIXILグループの株主提案(株主提案が採択)
LIXIL取締役、瀬戸氏側が過半数 株主総会
LIXILグループの株主総会で、異例の事態(筆者としては、正当な決議が行われた、と感じています。)が起きました。
2019年6月25日の株主総会で、会社側が提案した取締役陣ではなく、株主側が提案した取締役陣が全員選任されるに至りました。
内容を詳しく見てみたいと思います。
会社側の提案が退けられた
まずは日経の記事から見てみましょう。
(以下、日本経済新聞 2019/6/25 15:53 (2019/6/25 16:25更新) 記事より引用)
LIXILグループは25日、東京都内で定時株主総会を開いた。株主側が提案した取締役候補8人のうち、前最高経営責任者(CEO)の瀬戸欣哉氏ら全員を選任し取締役の過半数を確保した。瀬戸氏はCEOに復帰する意向。取締役候補の会社側提案が退けられるのは異例で、経営トップの混乱をめぐる約8カ月間続いた問題は収束する。
株主提案は、会社側との共通の候補者だった元最高裁判事の鬼丸かおる氏と、元あずさ監査法人副理事長の鈴木輝夫氏の両者も含めた8人が選任された。
会社提案は福原賢一氏と竹内洋氏以外の6人(共通案の鈴木氏と鬼丸氏を除く)が選任された。株主提案の取締役が過半数を上回ったため、復帰に意欲を見せていた瀬戸氏がCEOに就くとみられる。
昨年10月に「プロ経営者」として招かれた瀬戸氏が事実上解任され、母体企業の一つである旧トステム創業家の潮田洋一郎氏が新CEOに就任した。交代の経緯が「不可解」として機関投資家の一部が反発。潮田氏は取締役とCEOの退任を決断した。
会社側は当時の取締役を全て退任させ、新たな取締役候補を提案。瀬戸氏側は自身を含む8人の独自の取締役候補を提案し、選任されれば瀬戸氏がCEOに復帰する意向を示していた。双方が相手提案の否決を株主に呼びかけ対立が激化した。
注目された総会には多くの株主が詰めかけた。総会の冒頭、山梨広一社長が一連の経営の混乱について「株主にはご心配をおかけし、深くおわびする」と陳謝した。
総会で質問に立った株主からは「潮田氏の影響力はなくなるのか」「会社側提案の社外取締役だらけの取締役で本当に機能するのか」などの指摘が相次いだ。
(以上)
何が問題だったのか
LIXILグループは、合併に合併を重ねて国内企業としては建築材料・住宅設備機器業界最大手の企業」となりました。
2011年4月にLIXILグループはオーナー一族で問題の発端となった潮田氏の父親である潮田健次郎が創業したトステムを存続会社として、株式会社INAX、新日軽株式会社、東洋エクステリア株式会社、(初代)株式会社LIXILの4社を吸収合併して、商号を(2代目)株式会社LIXILに変更しました。
さらに、サンウエーブ工業株式会社の開発・管理部門も統合されたことで、売上高1兆円以上、社員約6万人を抱える業界最大規模の企業が誕生し、2015年4月には当社の製造子会社として存続していたサンウエーブ工業株式会社も吸収合併することで、現在の姿になっています。
この創業家の潮田氏が上場会社であるLIXILグループを、私的な器としてみているのではないか、と疑いたくなるような事象を度々週刊誌等にリークされ、それらの動きを制止しようとしていた前社長であったプロ経営者「瀬戸欣也」氏を突如として解任したことが事の発端でした。
潮田氏の驚くべき計画とは具体的には
・本社のシンガポール移転
・ファンドスキームによるMBO(マネジメントバイアウト)
(まずLIXILグループをMBOで非上場化させ、次にシンガポールで買収する企業と合併、合併会社をシンガポールで上場させる、というようなスキームであったとのことですが、真相は定かではありません。)
国内市場が主戦場であるLIXILグループが非上場化し海外に拠点を置くことに合理的な説明、メリットなどが示されぬまま、独断専行とも見れるような形で、MBOの話がまことしやかに流れていき、経営は混乱している、とみられ、海外の株主、機関投資家からは、
・「コーポレートガバナンスの欠如」
を指摘されるに至っていました。
このようなゆゆしき事態に、前社長である瀬戸欣也氏らが、株主側として、会社側と対立する形で、取締役のメンバーを提案するに至った、ということです。
まとめ
今回の事態は、コーポレートガバナンスの強化を叫ぶ日本において、株主総会において正当なジャッジメントがなされた事例として、好例として残っていくものと思います。
合併に合併を重ねてきた会社ということも有り、統一化、ガバナンスなど社内における課題が山積していると見て取れますので、そういった企業価値向上に目を向けることに注力して頂きたいと感じました。
とはいえ、瀬戸欣也氏も、今後の経営手腕如何によっては、再度、何かが起きてしまうことも現実です。
プロ経営者として、これからが試されていくことになる、と筆者は考えています。