NTTドコモのABCクッキングスタジオの売却にみるM&Aの失敗
シナジーが薄い買収だった
NTTドコモは2014年に約200億円でABCクッキングスタジオの51%の株式を取得し、同社を買収、子会社化していました。
同時期に、NTTドコモは、「食」に関連するビジネスを買収しています。
2012年に買収した食品宅配大手らでぃっしゅぼーやも同時期におけるM&Aで、当時、NTTドコモは食品関連事業に進出をし、更には農事業へのスマートメーター(牛の飼育 牛温計等)の利活用など通信技術を利活用したB2Bビジネスなども展開していました。
料理教室のコンテンツとドコモのDポイントなどの付帯的なサービスとの融合などを進め、一定の成果を得たために売却を判断したとのことですが、「一定の成果」がどの程度であったのかについては、明らかにされておらず、また、料理事業を拡大するにはABCクッキング側が主導した方がよいと捉え、資本提携解消の運びとなりました。
わざわざ資本提携をしている意義がない、との判断であり、一定の成果はあるものの、すなわち
・思ったほどの相乗効果・シナジーは望めなかった
ということと捉えて良いでしょう。
中期経営計画におけるM&A戦略の失敗
買収当時の記事を見ますと、
「ABCの料理教室やレシピといったコンテンツにNTTドコモのモバイル技術を組み合わせた新サービスを開発する。両社は3月に業務提携を発表したが資本提携を機に連携を強化する。会見したドコモの加藤薫社長は「健康・学びの分野を重点的に、スマートフォンで快適に使えるサービスとして提供していく」」
(日本経済新聞2013/10/25付より引用)
とのことでしたが、結果的には、連携はうまくいかなかった、というのが実情でしょう。
当時から、本件買収については、200億円相当の買収価額であったことや、戦略的な意義が見いだせないなど、多くの批判を目にしました。
今回は、株式売却額は買収額と同程度の約200億円になる見込みで、3月中に譲渡する予定とのことです。
また、上記で触れましたらでぃっしゅぼーやについても、2018年にオイシックスドット大地(現オイシックス・ラ・大地)に売却し、これにて食に関連する事業のM&Aの失敗のみそぎは終わった、ということだと考えます。
ドコモは2011年に公表した中期計画で、
「モバイルを核にした総合サービス企業への進化」
を打ち出してましたが、この計画に基づいて買収した異業種企業は相次いで売却されることとなり、当時の計画並びに戦略は、失敗に終わった、と捉えることが正しいでしょう。
まとめ
直近の事例で、M&A(買収)で失敗した企業と言えば、
・RIZAPグループ
をあげることが出来ると思います。
基本的には、「戦略なきM&Aは失敗する」というのは当たり前の話であり、RIZAPグループの場合は、財務諸表のからくりもあり、赤字企業を買収してくることを常としていましたが、赤字企業を買収しても、黒字に変えられなければ、連結企業体におけるキャッシュフローは好転しません。
戦略が誤る、という方向性には、日本企業の中途半端なM&Aへの姿勢が挙げられると思います。
51%の買収では、子会社とはなるものの、NTTドコモのような企業文化の会社とその割合では、ドコモ側の遠慮も出てしまうでしょうし、
・中途半端な割合
・何とかなると思ってしまう
・旧経営陣とのコミットメントの強弱の付け方
と言った点が失敗に繋がる要素であった、と振り返るべきでしょう。
今回のポイントは、下表の3-5のあたりであった、と考察します。
弊社作成「M&Aの失敗パターン」