事業承継税制とは?平成30年度の税制改正ポイントを簡単に解説します
平成30年度税制改正において、同年4月1日から事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制が大きく改正され、10年間限定の特例措置が設けられました。
今回は、その通称「事業承継税制」についてお話したいと思います。
対象となる税は?
正式名称は「中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充」で、通称「事業承継税制」です。
対象となる税は、「相続税」と「贈与税」の2つで、いずれも会社の事業を個人に対して承継する際に、非常に多額な税が課されることで、個人への承継の路(みち)が閉ざされてしまい、国内の事業承継における障壁となっていました。
これまでも税制の改正があったものの、限定された対象、範囲であり、導入後も、非常に厳格で継続的な条件が課されており、実際の使い勝手は、必ずしも良いと言えるものではありませんでした。
今回、大幅に税制が改正されたことで、非常に使い勝手が良い制度となり、一気に着目されている、ということです。
改正のポイントはどんな内容なのか?
今回の改正をまとめますと大きく2点のポイントがあります。
(1)事業承継に係る負担を最小化
① 対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用可能に。また、納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担ゼロに。
② 親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に。中小企業経営の実状に合わせた、多様な事業承継を支援。
(2)将来不安を軽減し税制を利用促進
① 売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免。経営環境の変化による将来の不安軽減
② 5年間で平均8割以上の雇用要件を未達成の場合でも、猶予継続可能(経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導助言が必要)
上記の(1)はもともと、対象株式数に上限があり、100%承継(譲渡・贈与)は対象外であり、実務上使い勝手が悪いものでした。
また、承継者も1人から1人に対して、と限定されていた点が、「複数人」の後継者候補に承継可能になった点も大きなポイントです。
(2)については、後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税が課税されるため、過大な税負担が生じうる点、不安が大きく残ってしまうままの状況であり、やはり使い勝手が悪いと言わざるを得ないものでした。また、②については税制の適用後、5年間で平均8割以上の雇用を維持できなければ猶予が打切られ、仮に雇用8割を維持出来なかった場合には、猶予された贈与税・相続税の全額を納付する必要があり、昨今の人手不足というマクロ的な環境の中、本件の雇用要件は中小企業にとって大きな負担となり、状況を無視した制度であったと言えます。
但し、※5年平均8割を満たせなかった場合には理由報告が必要。経営悪化が原因である場合等には、認定支援機関による指導助言の必要。この点については、いたずらに、雇用を打ち切るなどが出来ないように、との視点もあるのだと理解していますが、もう一段殉難になってもよいと考えられます。
今回は、上記のように改正され、一言でいえば、非常に使い勝手が良い制度になった、と言えます。
まとめ
以上まとめますと、前回と比較して、
・対象株式が全株式になったこと
・納税猶予割合が100%となり、承継時の税負担がゼロになること
・対象後継者が1人から最大3名になったこと
・税額の計算が直近の株価を基に算定され納税額との差額が減免されること
・雇用要件8割を充足できないときの手当てがなされたこと
と一時的な税負担がなくなる、また減免される、要件が緩和されることで、使い勝手が良い制度となった、ことが今回の一番のポイントです。
事業承継税制を活用するのか、はたまた、法人に対しての譲渡をお考えになるのか、については、別の論点が存在しますが、まずは弊社のサイト1分で分かる企業価値診断、にて、自社の株式価値の算定をしてみてはいかがでしょうか。