企業価値を理解する
こんにちは。株式会社BIZVALの代表の中田です。
今回は、中小・中堅企業における企業価値とは何だろうか、ということについて考えを述べたいと思います。
正直、コーポレートファイナンスの教科書や、世間でのセミナーなどと考え方のアプローチが異なり、有識者の方からお叱りを受けてしまうかもしれません。しかしながら、教科書を読んでも、セミナーに出ても、実務で携わっても、Excelの数式上はじかれてくる企業価値に、長い長い説明をしなければ、本質に近づけないような点もあり、事業会社を営んでいらっしゃる方々への理解には及ばない場面も多く、なぜなのか、と悩んでしまうこともありました。
今回は、そういった経験を踏まえて、実務での分かりやすい企業価値とはそもそも何かをお伝えしたいと思います。
中堅中小企業の企業価値とは
【BIZVAL】企業価値とは from BIZVAL
中堅中小企業の企業価値は、手元に残っていくお金(キャッシュ)の塊です。
事業を運営すれば、勝ち、負け、といったことが自然に発生します。
会社単位で考えると難しいのですが、プロジェクトなど時間軸的なゴールが決まっている事例でも考えてみましょう。ある投資があった場合、その投資に対して幾ら回収できるのかと似ています。
【例】
1,000万円の投資をして5年後には全体の収支でプラス250万円になる案件がある。
1年目:250万円
2年目:250万円
3年目:250万円
4年目:250万円
5年目:250万円
合計:1,250万円
この全体の事業収入は5年間で1,250万円、投資額は1,000万円でしたので、250万円の価値を生み出す(価値創造)ことが出来たと言えます。(ここではよくテキストなどに出てくる時間価値は無視しています。)
この例を基にして、
プロジェクト総価値=1,250万円=「キャッシュの塊」=企業の価値
と読み替えてみてください。
回収額で言えば投資額に加えて、なおかつ、お釣りもきた、といったところでしょうか。
企業の場合は、5年で終わり、と言うわけではなく、半永久的に継続していく前提です。それらの生み出される毎年のキャッシュの塊が一体いくらになりそうなのか、が企業の価値になっていきます。
今回は、コーポレートファイナンス理論で使われる
・貨幣の時間価値
・割引現在価値
・期待収益率
などの話はしておりませんが、厳密には上記のような難解な言葉がわからずとも、経営者の方であれば、感覚的にいくらくらいになりそうか、を現在手残りになっている毎年のキャッシュから読み解くことは、比較的容易なのではないか、と思います。
また、今回は投資額を、事業経営をするオーナーが一人で投資したものと解釈しました。
投資家が一人であれば、当然「キャッシュの塊」が帰属する部分の価値は、一人のものになるので、企業の価値=「キャッシュの塊」=株主の価値、と読み替えられます。
これに対して、先ほどの1,250万円が企業価値であった場合、会社が、
・金融機関から500万円
・株主1人から500万円
集めて、1,000万円の投資をしたとしましょう。
このとき、1,250万円が企業価値ですが、500万円の借入金は、当然オーナーのものにはなりませんで、1,250万円から500万円を控除した750万円が株主に帰属する価値になります。
企業価値、株式価値の算出方法まとめ
さて、よくある企業価値の計算式で
NPV(企業価値)-純有利子負債価値=株式価値
という式がありますが、企業価値から、なぜ、有利子負債を控除するのか?が今回の事例でお分かりいただけたのではないでしょうか?
株式価値を算出するには、企業価値から、金融機関に返済義務のある有利子負債分(厳密には純有利子負債=Net Debt)を控除して、株式の価値を出す、という方法しかないわけです。
このように、資金の拠出するサイドから見ると、金融機関の借入金も企業の価値を構成しており、株式の価値は、企業価値全体から、有利子負債を控除する、余った部分こそが、株式の価値、となり、株主に帰属する価値である、と考えることになります。
今回は、
・企業価値とは
・借入金が企業価値になぜ含まれているのか
・株式価値とは
を概念的に説明致しました。