事業成長を目指したM&A
かつてM&Aに消極的だった日本においても、近年はM&A案件数・金額ともに急激に伸びています。M&Aによるメリットは、事業規模の拡大や人材の獲得など、買い手企業のメリットが注目されがちですが、売り手企業にとってもM&Aによるメリットはあります。特に、売り手企業側の事業成長のために、M&Aを活用することもできます。
今回は、売り手企業の視点から事業成長を目指したM&Aについて説明します。
M&Aとは、企業間の経営資源・事業の相互補完
M&Aというと買い手企業の事業を補完するために用いられるようなイメージがあるかもしれませんが、それはM&Aによる狭義の効果でしかありません。広義のM&Aの効果は、買い手企業・売り手企業双方の経営資源・事業を相互に補完するというものです。
買い手企業は、これまでに自社が取り組んでいない事業や、ノウハウ・特許、人材、顧客を獲得できるという点でM&Aによるメリットは多くあります。
では、売り手企業にとっての、M&Aによるメリットをいくつかご紹介します。
買い手企業の設備・販売網などを活用できる
M&Aによって、買い手企業の傘下に入ることで、買い手企業の設備や販売網などを活用できるようになれば、売り手企業の事業分野を成長させることができます。これは、売り手企業が単独で事業を拡大させようとした場合よりも、各段に成長速度を速めることにつながります。
買い手企業の確立した経営管理体制を活用できる
ベンチャー企業をはじめとした中小企業にとって、総務・法務・経理・人事といったバックオフィス業務は、投資を先送りにしがちです。大企業では、バックオフィス業務が十分に確立しているため、M&Aにより大企業の傘下に入ればそこも活用できるようになります。
例えば、コーポレートガバナンスやコンプライアンス、特許管理といった部分は重要なところですが、こういった経営管理体制が整っている買い手企業であれば、必要な法律関係のスタッフも豊富に揃えているため、何かあっても素早く対処できます。そのため、より本業へ集中して進めることができ、リスクも軽減することができます。これは売り手企業にとって、大きなメリットとなります。
また、人材育成制度が充実している買い手企業であれば、即戦力人材の採用だけでなく、新卒採用などを行い育成することができるため、採用活動の幅が広がります。こうして人材育成・採用戦略にも変化が起き、事業成長を加速させることが可能です。
買い手企業が保有するブランドの活用
既に認知度も高くブランドが確立している買い手企業であれば、そこのブランドを活用し、売り手企業の事業の認知度を一気に上げ、拡大させることも可能です。
これまで顧客数を伸ばすために費やしてきた時間・資金を大幅に削減することができます。
売却資金および買い手企業の資金を経営に再投入
M&Aを行った際、売り手企業が受け取った売却資金や、買い手企業側の資金を事業に投資することで、採用する人材を増やしたり、研究開発を進めるなど、事業拡大に向け進めることが可能です。
M&Aの目的を明確にすることが重要
M&Aにおいて、買い手企業・売り手企業双方のメリットが生じるような条件交渉を行うには、どうすれば良いのでしょうか。
売り手企業側は、自社の事業拡大を目的としているのであれば、どういった条件だと目的を達成できるのか、を予め定めておくことが重要です。
M&A交渉の段階において、売り手と買い手は1対1となり、売り手企業側は徐々に買い手側によるデューデリジェンスにより求められる条件に応えようと弱気になり、希望条件を通さずに失敗してしまうケースも多々あります。
売り手企業側からも希望条件をしっかりと提示し、妥協せずに交渉することが必要です。
双方にとってメリットのあるM&Aを目指しましょう。
まとめ
今回は、売り手企業側から見た事業成長を目指したM&Aについて説明しました。M&Aは、買い手企業のメリットばかりが注目されがちですが、売り手企業にとっても事業成長を速められるなどのメリットがあります。売り手企業にとって、M&Aは活用の仕方次第で、プラスの効果をもたらすのです。