廃業せず事業承継という選択肢を考える。経営者必見、引退後の会社についてはプロに相談しよう
日本では社会全体の高齢化が問題となっています。企業経営においても例外ではなく、経営者の高齢化に直面しています。経営者が高齢になり経営を引退しようと思っても、親族や従業員に事業を引き継ぐといった社内での事業承継を行うべきか、M&Aにより他社へ引き継ぐべきかなど様々な選択肢が存在し、どの選択肢を選ぶべきか悩む経営者もいると思います。そこで、今回は、経営者が引退を考えた際に、その後の事業に関して誰に相談すべきか説明いたします。
企業経営を引退する際の選択肢
・企業経営者が直面している引退という問題
中小企業庁の調査によりますと、日本における2015年時点の中小企業経営者を年齢別に見た場合、66歳の経営者が最も多く、この20年間で中小企業経営者の年齢が約20歳引きあがっていることが分かっています。
また、同じく中小企業庁で行った「経営者の平均引退年齢の推移」によりますと、近年、小規模事業者で70.5歳、中規模事業者では67.7歳で引退を迎えていることが分かっています。
これらの調査により言えるこは、現在の日本における中小企業経営者は既にほとんどが引退を考える時期に差し掛かっているということです。2020年頃には、団塊世代の経営者が大量に引退を迎えるとも言われており、中小企業において経営者の引退にどのように対応するかが重要な問題となっているのです。
・経営者が引退の際、とりうる選択肢
このように中小企業経営者にとっての引退が、日本全体で問題となっていることが分かりましたが、経営者が引退を判断したとき、どのような選択肢があるのか整理します。経営者が引退を考えた際、一番最初に考えられるのが親族や社員もしくは他社を活用して事業承継を行い、企業を存続させるという選択肢でしょう。事業承継を行うには、後継者もしくは引受先企業を確保するだけでなく、計画的に作業を行っていく必要があります。
また、後継者を確保できない、様々な事情で事業を続けられないなどの理由で、既に自分の代で事業を終えると決意している経営者もいるかもしれません。事業を終える場合は、廃業という選択肢をとることになります。廃業する場合も、会社の資産の精算を行い、廃業後の生活を過ごすだけの資産をどうやって確保するかといったことも考えなくてはいけません。廃業するとしても、計画的に行う必要があります。
経営者が引退する際の選択肢には、事業承継なのか?廃業なのか?、事業承継であれば後継者(親族や社員など)へ継ぐのか、他社に譲渡するのか?が考えられますが、どの選択肢を選ぶべきか迷っている方もいらっしゃると思います。迷っている方は、ぜひ仲介業者にご相談することをおすすめします。
経営を引退する際は、事業承継支援サービスを活用
・事業承継支援サービスに相談
経営を引退することを決めたものの、事業承継をするか、廃業するかまでは決めかねている場合、事業承継支援サービスを活用することをおすすめします。事業承継・廃業どちらかに決めていたとしても、事業承継支援サービスに一度相談した方がよいでしょう。事業承継支援サービスであれば、事業承継・廃業いずれを選んだとしても、どのような手続きを踏めばいいかアドバイスをもらうことができ、スムーズに作業を進められるのです。
仮に、事業承継することを誰にも相談せずに決めたとしても、その後の事業承継作業がスムーズに行われるとは限りません。事業承継することに決めた企業でも、事業承継作業がうまく行かなかった企業も存在し、なぜ事業承継作業がうまく行かなかったかを振り返ったところ、「誰にも相談しなかったから」という理由を挙げている企業もあります。
廃業を決めた企業であったとしても、一度、事業承継支援サービスに相談を行うべきでしょう。廃業を決める企業の経営者のほとんどは誰にも相談せずに廃業することを決めているという統計もあります。しかし、廃業する企業の中には、売上が好調だったり、技術や特許など活用できる資産を持っていたり、まだまだ廃業するには惜しい企業もあるのです。事業承継支援サービスに紹介することで、もしかしたら事業の引受先を紹介してもらえ、事業を継続できるかもしれません。
このように、経営者が引退する際は、事業承継・廃業どちらを行うにしても、まずは事業承継支援サービスに相談することをおすすめします。
・事業承継支援サービスも様々
事業承継支援サービスに相談しようとしても、事業承継支援サービスも複数存在し、それぞれ専門分野が異なるなど、どの業者を選ぶべきか迷ってしまうと思います。そこで、事業承継支援サービスについてまとめてみたいと思います。
経営者が活用できる事業承継支援サービスとしては、以下のサービスが挙げられます。
(1) 商工会など
特徴:商工会等で事業承継や廃業にあたっての支援を行ってくれるところがあります。商工会などは、身近にあり日ごろの付き合いもあることから相談しやすい存在です。ただし、あまりにも身近すぎる存在であることから、お互いの状況を知りすぎていることも考えられます。また、事業承継や廃業といった慎重な問題に対して、近所へ情報が広まることを心配方もいるでしょう。
(2) 金融機関
特徴:金融機関でも事業承継や廃業にあたっての相談窓口を開いているところがあります。金融機関なので、資金面に関する相談が得意です。ただし、資金面に対しての知識はあったとしても、事業面についての深い知識までを持ち合わせていない場合が多くあります。また、日ごろ融資等でお世話になっているため、事業承継の話題を金融機関に対して相談することは、融資面でのマイナス評価を受けるのではと、経営者にとって心配になり相談しづらく感じる方もいるでしょう。
(3) 税理士・弁護士などの士業
特徴:税理士や弁護士など、資格を持った士業と言われる方々が事業承継や廃業の相談にのってくれることもあります。税や法律などの専門家であるため、専門分野に対してきめ細かいアドバイスを頂けるメリットがあるでしょう。ただし、事業承継や廃業は、税や法律だけでなく、実際の事業面に関しての知識も必要になるなど、幅広い分野に対応する必要があるため、専門外の分野に対しては相談を受けていただけない可能性があります。
(4) 自治体など
特徴:中小企業の多い自治体では、役所等で事業承継の相談にのってくれることもあります。行政が行うサービスであるため、低料金で受けることができ、気軽に相談できるというメリットがあります。ただし、役所の職員は専門で行っている人材とは限りません。表面的なアドバイスはもらえるかもしれませんが、深い専門的な相談まで扱ってもらえないでしょう。
(5) M&Aアドバイザー
特徴:民間企業で事業承継を専門に行っている企業です。事業承継を事業として行っているため、費用がかさむことが考えられます。ただし、事業として行っているため、事業承継に関するノウハウが豊富にあり、様々なアドバイスを受けることができます。様々な企業とつながりがあることも魅力です。
M&Aアドバイザーへの需要が高まっている
事業承継支援サービスの種類について説明しましたが、これらの事業承継支援サービスの中からM&Aアドバイザーの活用をおすすめします。
近年、中小企業経営者の高齢化と後継者不足という問題から、事業承継を他社への売却、M&Aによって行う機会が増えています。民間企業の日本での調査では、未上場企業間のM&A案件は、1996年に年間約150件ほどだったものが、2014年には年間約700件ほどと20年弱の間に約5倍まで増えているのです。M&A件数の増加に伴い、M&Aを専門に行うM&Aアドバイザーも非常に多くなりました。
M&Aアドバイザーを活用するメリットは、M&Aに関する専門ノウハウと様々な企業へのネットワークです。経営者の引退相談を事業として行っているため、これまで様々なケースに対応しており、資金面だけでなく事業面等においてもアドバイスできます。また、様々な企業とのネットワークから、他社へ事業承継を行う際も、引受先の企業を見つけられるだけでなく、より信頼性の高い企業を引受先に選ぶこともできます。
経営者が引退を決めるときは、ぜひM&Aアドバイザーに相談することをおすすめします。