株式譲渡の実行パターン③~株式譲渡とアーンアウト条項~
【2023年1月更新】【アーンアウト条項】
アーンアウト条項と株式譲渡の関係についてご説明します。
一点、誤解なきようにお伝えしておきますと、アーンアウト条項は株式譲渡に限らず、会社の事業の譲渡(会社分割・事業譲渡)のパターンにおいても、用いられる概念ですので、ご留意ください。
アーンアウト条項(アーンアウト)ですが、幅広い意味では、
M&A後における売却対象者側が継続して売却後も経営等に一定のコミットをすることで得られる、業績等に応じた追加の稼得可能な利益・収益・キャッシュとでも定義しておくと良いと思います。
昨今ではスタートアップ企業の買収を含めて、成長が著しい企業を途上段階で買収をする、かつ、そのような企業の経営を一定期間現在経営陣に任せ続けるというケースが増えており、アーンアウトを用いることがあります。
経営陣を一定期間ロックアップしつつ、一定のインセンティブをもって働き続けてもらう、ということで用いられます。
【アーンアウト条項の性質】
次にアーンアウト条項の性質について考えてみます。
アーンアウトは、1.対価の後払いでも、2.株式の段階的取得でも、なく、あくまで株式譲渡が行われた後に、
「当該企業のさらなる株式価値向上へ向けた取り組み」
を買主と売主とで双方が合意しておくことで、売主側で継続して経営に関与し、一定のKGIやKPIをクリアした時に、追加で買主から売主に対して、対価を支払うことになるため、対価の後払いとは性質は異なります。
ここで、当初設定した価額の一部を、一定の業績達成した場合に支払う、となりますと、やはりその行為は
「対価の後払いとみなされる可能性大」
であり、課税が最初の譲渡時点で課されるものとなる点、留意してください。
したがって、あくまで、
・現時点ではいくら支払うのか確定できない(金額の見積もりが合理的に不可能)
・対象会社から支払うものではなく、あくまで買い手側が支払うものである(対象会社から支払ってしまうと業績連動型報酬とみなされる可能性大)
・現時点では合理的に見積もれなかった株式譲渡価額に対して、算定不能な将来価値を見据え、株式価値算定の先送り
と捉える必要があると考えられます。
【まとめ】
アーンアウトにおける留意点は、例えば、最初の100%株式譲渡実行段階と一定の連続性はあるものの、完全連動しているものではなく、対価の後払いという性質ではない、という要件をクリアすることが最大の論点と言えるでしょう。
課税関連の動きに注意しつつ、実務的な設計をしなければ、最初の株式譲渡時点で課税されてしまう恐れもあるため、ファイナンスアドバイザーなどアーンアウトの設計にたけた専門家に依頼することが望ましいと言えます。