RIZAP(ライザップ)グループの復活へ向け~不採算事業のスクラップ&ビルド~
RIZAPグループがジャパンゲートウェイを萬楽庵に売却、事業のスクラップ&ビルドを開始!
RIZAPグループがついに事業のスクラップ&ビルドを開始しました。
(少し時間が経過してから、より色々な事実が明確になってきたため、1週間程度経過してから記事を記載しました。)
2019年1月25日、連結子会社であるジャパンゲートウェイの全株式を、萬楽庵に譲渡したと発表しました。
譲渡価額は非開示ですが、約8億円程度の売却損を2019 年3月期第4四半期に計上する見込みとのことです。
情報が非開示な点が多いことから、公開情報から何が見えるのか、どう見るのか、が重要ですね。
ここで、ジャパンゲートウェイの沿革と共に今回の案件について触れてみたいと思います。
ジャパンゲートウェイとは?どんな会社か?
2018年6月27日、東京地裁より破産開始決定を受けた会社が、ジャパンゲートウェイの存続していた会社「(株)室町販売委託」となります。
この名称では、殆どの方が何の会社かがお分かりにならないかと思いますが、過去の記事を確認すると、以下のようなスキームでRIZAPグループは、ジャパンゲートウェイの事業を
・事業譲渡
というスキームで譲り受けたもので、「会社ごとを買収したものではない」ことが分かります。
なお、公表されているRIZAPグループの資料で唯一、Xio(現在のジャパンゲートウェイの前身の名称)について触れているのが
(2018年2月14日アナリスト向け説明資料)
です。
(以下、同資料P36より引用)
ジャパンゲートウェイ事業は、昨年2017年12月20日付で、株式会社ジャパンゲートウェイから当社の子会社である株式会社XIO(サイオ)に対して、コンタクトレンズ事業を除くジャパンゲートウェイの事業譲渡を実施
(本事業譲渡の後、株式会社XIOは社名を株式会社ジャパンゲートウェイに変更)
会社ごと譲り受けてくる、買収してくる場合、もっともポピュラーな方式が
・株式譲渡
ですが、RIZAPグループがジャパンゲートウェイを買収した際には、事業譲渡を用いています(別の時にも触れますが、RIZAPグループが買収してくるスキームでは意外と事業譲渡を活用している例が見られます。)。
一方、下記でも触れますが、今回のRIZAPグループが売却・譲渡をした株式会社萬楽庵(愛知県名古屋市)に対しては、
・株式譲渡
をしています。
(事業譲渡のメリット・デメリットなどはこちらでご確認ください。)
時系列で、各社ごとの状況は以下の通りです。
㈱室町販売委託 (旧最初のジャパンゲートウェイ)
2006年11月14日設立
2013年5月期:売上高約217億円
2016年5月期:売上高約80億円
2016年12月:企業再生ファンドに事業譲渡と同時に、株式会社ジャパンゲートウェイ販売に社名変更
2018年4月:「㈱室町販売委託」に社名変更
2018年6月:破産開始決定負債総額約30億円
㈱室町販売委託から事業を譲り受けた企業再生ファンド下の旧ジャパンゲートウェイ
2016年12月:株式会社ジャパンゲートウェイ販売から事業譲渡を受ける
2017年12月:RIZAPグループ㈱の子会社で、同一社名の㈱ジャパンゲートウェイ(旧:㈱Xio(サイオ))へ事業譲渡
RIZAPグループが事業譲受したジャパンゲートウェイ
2017年12月:㈱Xioが事業譲受をし、(株)ジャパンコーポレーションに社名変更
2019年1月:RIZAPグループが保有する㈱ジャパンゲートウェイ(東京新宿区)の全株式を株式会社萬楽庵(愛知県名古屋市)に譲渡
一言でまとめますと、RIZAPが買収するまで、非常に複雑な道をたどってきた会社(事業)である、と言えます。
ジャパンゲートウェイの売却、譲受先の株式会社萬楽庵(愛知県名古屋市)とは?どんな会社か?
今回ジャパンゲートウェイを会社ごと売却をした会社「萬楽庵」の中村規脩会長は、テレビ通販でおなじみの
・ショップジャパン
を展開する
・オークローンマーケティングの創業者です。
㈱萬楽庵が今後、新規で展開する通販事業における「美容・ヘルスケア」の分野で、相乗効果(シナジー)が見込まれることから、今回の取得に至ったとのことです。
ここで、今まで非常に複雑な事業譲渡を繰り返し、現在のRIZAPグループの子会社となったジャパンゲートウェイですが、上述の通り、萬楽庵との間では、株式譲渡の手法をとっています。
これは、旧ジャパンゲートウェイが非上場企業の中で、
1.大きく販売戦略を誤った点
2.過少税務申告等不正を繰り返していた点
3.内部管理体制の脆弱性・旧オーナー陣の不正を助長していた点
ゆえに、破産をした㈱室町販売委託という会社であったことから事業譲渡にせざるを得なかったと考えます。
ここで、いったん企業再生ファンドが事業譲渡で、過去の見えない負債などを承継しなかったことに加え、
・RIZAPが承継した事業が、コンタクトレンズ事業以外の化粧品・ヘアケア用品であったという、事業としては分かりやすい単位であったということ
・旧来からのジャパンゲートウェイにおける見えない(隠れたる)債務(労働債務等は要調査なのでしょうが)がほぼ解消されていること
から、今回の萬楽庵は事業譲渡でリスクを遮断する必要なはないと判断し、現状の契約関係から、当然権利義務一切を受け取る株式譲渡に至ったと見ることが出来る、と考えられます。
まとめ
ジャパンゲートウェイは今期、新たに開発した新商品を投入し、大規模なプロモーション活動を進めていたものの、販売実績(売上高)が当初の計画を下回り、大規模にかけていた販促費・広宣費の先行投資の短期的な回収の目途が立たたないことから、構造改革等による大幅な引当金を計上し、19年3月期上期の営業損失の計上に繋がっていたと報じています。
今回の実質的な損失確定は、引当金計上の中で既に積まれているものと理解できますが、8億円の株式譲渡での損失ということは、すなわち、1,000万円の資本金の会社が事業を譲り受けた時点では、8億円以上の金額で買収をしてきた、ということになろうかと思われます。
企業再生ファンドが赤字で譲渡するわけもなく、恐らく本件は、のれんが計上されていることを踏まえると、算定式は
「企業再生ファンドが買収した価額+のれん」(仮に20億円(純資産15億円(赤字であったので仮に赤字が5億円)))ー「今回の株式譲渡価額」(仮に7億円)=8億円
のようなイメージでしょうか。
確実に言えることは
・高値で掴んでしまった
ということは明白でしょう。
構造改革は始まったばかりですが、RIZAPグループのこのように買収してきた会社の変遷は、今後全てウオッチしていくことで、どのような資金の流れがあり、企業再生における本質とは何か、に迫っていきたいと思います。