MBOのあるべき姿の提示 ~廣済堂MBOからの考察①~
廣済堂のMBOについて
ここのところそれなりに紙面をにぎわせている「廣済堂」のMBOについて触れてみたいと思います。
廣済堂とは、東京にあった「廣済堂印刷」は印刷業を祖業として、関西にあった「関西廣済堂」は人材に焦点を当て、求人広告ビジネス(雑誌での求人掲載、掲載企業から広告料を収受する旧来型の求人ビジネスモデル)を祖業として発足し、両社が合併したのが、1999年で、現在の廣済堂の姿となりました。
現在では人材ビジネスは、求人広告事業のみならず人材派遣も行っています。
しかしながら着目すべきは、これらの祖業とは全く関係のない
「葬祭業」
と言えます。
そもそも最初に廣済堂のMBOに乗っかったのは「ベインキャピタル」で2019年1月で買付価格は1株610円、TOB公表前日の終値に対して43.87%のプレミアムを加えた形でTOB実施でした。
これに対抗する形で、2019年3月株式会社南青山不動産とレノ社(レノと関係が深いとされる村上世彰氏 との表現ですが、)が対抗してきた形です。1株750円と大幅にプレミアムを乗せる形で公開買い付けを発表しました。
実は、この両者が目を付けている事業こそ、何を隠そう
「葬祭業」
なのです。
廣済堂の収益と不動産の状況
2018年の決算説明会から、意図的にか、2017年までは公開していた
「葬祭業」
の損益が決算説明資料から削除されるようになりました。
しかしながら、2017年の決算説明から廣済堂のセグメント別収益の状況が見て取れます。
ご覧の通り、
・祖業である情報 売上266億円 営業利益 3億円(利益率1%)
・葬祭業 売上82億円 営業利益 29億円(利益率35%)
となっております。
もはや、祖業はほぼ収益が出ない状況であり、子会社(61%保有)である葬祭業の
「東京博善」
頼みの状況と言えます。
さらに、BSも直近の状況から
・連結上の有形固定資産436億円
のうち、なんと
・313億円(約7割)は東京博善の保有資産
となっております。
(出所:第54期 有価証券報告書)
しかも、この土地建物には、葬祭場ならではの、
「含み益」
が相当程度存在していると推察されます(直近で「四ツ木」斎場の減損を示唆されているというものの、実態はキャッシュフロー黒字であり、どうにも意図がつかめないものです。)。
(出所:2017年決算説明資料より)
まとめ
さて、今回は、久しぶりに敵対的MBOがなされている話題の
・廣済堂のMBO
について触れてみました。
こうしたファンドの買収については、会社自体の買収というよりも
・不動産、収益物件、含み益
といったことが背景にあることがままあります。
株価が純資産を割っている、すなわち、
・PBRが1倍を割っているか
という観点で、割安銘柄、またはそもそも解散したほうが価値が大きいのではないか、といった見方ができ、今回の廣済堂でいえば、本記事記載時点で
・PBR0.75倍
とまさに、買収対象になりやすい、解散して財産を分けたほうが価値が高い、ともいえる状態です。
こういった上場会社に目を付けて、利益を収受していくモデル、ともいえなくはありませんが、MBOのあるべき姿、という題名ですので、後編では、MBOのあるべき姿、について触れてみたい、と思います。
ちなみに、筆者は、MBOにそもそもあるべき姿、はなく、いうなれば
「企業経営と企業価値向上へ向けたあるべき姿」
ではないか、と愚考します。