国内上場企業のコーポレートガバナンスの課題②~組織設計編~

AUTHOR:中田隆三
UPDATE:26.Nov.2018

「コーポレートガバナンスが効いている状態とは?」

コーポレートガバナンスが効いている状態とは、いったいどういった状態なのでしょうか。
最近では、「上場企業の4社に1社、監査等委員会設置会社に 」(2018/6/23 17:00日本経済新聞電子版)などの記事にも掲載されたように、コーポレートガバナンスを強化する動きが取り沙汰されることが多くなってきています。

日産の『有価証券報告書の虚偽記載』、東芝の『2015年(平成27年)7月20日計1518億円の利益を水増しする粉飾決算』、オリンパスの『オリンパス株式会社が巨額の損失を「飛ばし」という手法で、損益を10年以上の長期にわたって隠し続けた粉飾決算』と何故国内有数の大手企業が、いとも簡単にこのような「不正」を行うことが出来てしまうのでしょうか。

「結果としては?」

いずれの企業も「コーポレートガバナンス」、「透明性を確保」、「経営の監査・監督」といった言葉を明記していますが、結果としてはお粗末な話になっています。

しかも念入りに行っているせいか、不正の年数は1年などの短期ではなく、どの事例も5-10年単位と長期にわたって生じているのです。
こうした背景に、「権限の集中」と「長期的な同一経営陣」の存在があることは挙げました。

結果としては、経営者不正によって、企業は抑止力を無くしてしまう傾向がある、ということが現時点の日本のガバナンスの限界だと思われます。
(ただし、欧米でも同様の事件・事例がありますが、あまり国内のニュースにならないだけです。)

「それでも防止策としての組織体制の変革」

監査等委員会設置会社
指名委員会等設置会社
という、比較的新しい概念の組織体制が存在します。
(会社法という法律での運用と、任意での運用のいずれもが存在はしますが、当然法律に則った運用が強固です。)

簡単に言えば、自分自身の経営者としての行動を、役員としての
・指名権限、報酬決定権限、監査権限
を第三者に任せたうえで、経営をしていくことと、上記の3つの概念とを分けて、それぞれ牽制を効かせましょう、という話です。

こういった動きが加速化しており、いまでは上場企業の約15.7%程度(573社/上場企業3,639社(11月時点))と6社に1社も導入されていない状態なのですが、
2015年 162社
2018年 573社
と
3.5倍
に増加しているのです。

上場全体に占める割合に比べるとまだまだ少ないのですが、コーポレートガバナンスが効く状態である、と言われるこれらの制度の導入は年々増加しているというのが昨今の組織体制の変革の現状と言えます。

(出所:日本取締役協会)

まとめ

コーポレートガバナンスが効くであろう、と言われる状態を目指す、またその導入を図る、が進んでいます。

しかしながら、ある会社は、やはり監査等委員会設置会社ですが、
「すでにコーポレートガバナンスが効いていない」
ことが事実起きていました。

こういった状態がどうしても起きることの背景は、
「権限の集中」、「長期にわたる同一経営陣(者)」、「創業者等カリスマの存在」
があることはすでに述べた通りです。

会社の実態を知るには、取引をしてみることが一番手っ取り早いかもしれませんが、現場レベルではなかなか気づけそうにありません。
M&Aの世界はおおよそトップの方々との対話がありますので、もしかするとこういったことが如実に表れてくるのかもしれませんので、読者の方の世界で、
「真にコーポレートガバナンスが効いた会社か」
を見る機会が訪れるかもしれませんね。

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