事業承継に失敗した事例4選
経営に失敗はつきものです。事業承継においても例外ではありません。事業承継に失敗するということは、企業にとって深刻な問題になりかねません。場合によっては倒産につながります。実際、事業承継においてどういった失敗事例があるのでしょうか。
ケース1:親族へ引き継いだが、経営権のない親族とトラブルになる
中小企業の経営者であれば、後継者に親族を選ぶことが多いと思います。親族を後継者に選ぶこと自体は悪いことではありません。ただ、相続権のある親族が複数いる場合、経営に影響を与えることがあります。
ある企業では、社長に二人(男の子二人)のお子さんがいました。社長は引退するにあたって、長男に経営権を譲り、次男には会社の株の一部を相続させました。長男は社長となり、企業経営を行います。次男は、資産としてその企業の株を相続しましたが、他企業へ勤めているため、企業の経営自体には関与しません。
ですが、後に問題が発生しました。長男は、企業経営に集中し、経営状態が悪化したときも何とか立て直そうとやりくりしました。それに対し、次男は株主であることを理由に、配当を要求するという行為に出てしまいます。次男の配当要求により、企業は利益を活用することができなくなりました。
このケースでの問題は、次男に株を相続させてしまったことです。次男に株を相続させるのであれば、次男も長男と一緒に経営へ参画すれば、問題は起こらなかったことでしょう。経営と所有を分離することで、株主が経営を監督する機能を発揮することもできますが、経営の足かせになることもあります。中小企業の場合、経営と所有が一致していることの方が多く、一致しているからこそスムーズな経営が出来ることもあります。このような問題が起こらないよう、経営と所有双方の引き継ぎについて、十分に考慮する必要があります。
ケース2:引退とは名ばかりで、前社長が経営に関与し続ける
中小企業経営者の場合、生涯現役で働こうとする人も多く存在します。高齢になっても元気でいること自体は喜ばしいのですが、引退した経営者がいつまでも経営に関与し続けると、うまくいかないこともあります。
ある企業では、後継者(親族)に経営を譲り、自身は社長を引退しました。しかし、引退したにも関わらず、事あるごとに経営に対してクチを挟んできます。従業員は、実質の権力者は前社長であると感じ、前社長の機嫌を伺い、現社長からは遠ざかってしまいました。そのため、引き継いだ現社長は、従業員からの信頼が得られず、自分の思い通りに経営ができないことから、経営に対するモチベーションが下がってしまいました。
このケースで問題なのは、前社長が経営を引退したにも関わらず、経営に関与し続けたことです。後継者に引き継いだあと、経営状態が心配になるのも分かります。しかし、経営を引き継いだからには、後継者に経営を任せなければいけません。経営を任せることで、自然と後継者は育っていくものです。もし、後継者側から相談を持ち掛けられたら、そのときは相談にのるべきでしょう。それまでは、経営への関与は極力避けましょう。
ケース3:後継者の決定を先延ばしにしたことで、混乱
後継者を選定は、重要な問題であるため、なかなか決められないことでしょう。ですが、後継者を前もって決めないことで、問題を引き起こすことにもあります。
ある企業では、後継者が決まっていない状態で、突然、社長が他界してしまいました。その後、関係者で話し合いを行い、親族が経営を引き継ぐことになりましたが、何から行えば良いのか分かりません。取引先に迷惑をかけるだけでなく、従業員へも影響が出てきます。
このケースで問題なのは、経営者が早いうちから後継者を決めていなかったことです。早い段階で決めておけば、後継者に経営を学ばせることができるだけでなく、経営者としての自覚も身に着けさせることが出来ます。もし、後継者がいないのであれば、その後に備えて遺言を残しておくだけでも良いのです。遺言を残しておけば、残された人たちの混乱を減らすことも出来るでしょう。
ケース4:事業承継に対する考えを親族や従業員に相談せず決めてしまう
中小企業経営者は、自分の意志だけで、経営を進めてしまいがちです。そのため、事業承継という重要な問題についても、親族や従業員に相談せずに決めてしまうこともあります。
ある経営者は単独で、他社へ売却することで事業承継をすることを決めていました。親族や従業員など誰にも相談しなかったことで、売却先への交渉はスムーズに進みましたが、売却することを突然知った親族や従業員からは反感を買うことになりました。そのため、従業員は大量に退職してしまい、事業の存続が危ぶまれることにもなりました。
このケースで問題だったのは、経営者が単独で売却を決めてしまったことです。事業承継は、慎重に進めるべき問題です。ですが、引退後も事業を存続させたいのであれば、決定する前に周囲に相談するなど、出来るだけ同意を得られる状態にすべきでしょう。事業承継は、売却すれば済むという問題ではありません。売却後も事業が円滑に進まなくてはならないのです。
まとめ
事業承継の方法は様々であり、また企業の状態によって様々なケースがあります。そのため、事業承継を成功させるためには、様々な調整事項が存在します。今回紹介した事業承継の失敗事例を参考に、失敗へのリスクを減らすには、自社はどうすべきか考えてみてください。