IPOかM&Aか?成功するベンチャー企業のイグジットとは
ビジネスをどうやってイグジットさせようか?日本だと、未だに多くのベンチャー企業がIPO(新規株式公開)を目指しているのではないでしょうか。最近ではIPOだけでなく、M&Aにより経営者が多額の資金を手にするケースも増えてきています。
IPOは意外と狭き門
イグジットの一つとして、IPOを用いられることがあります。IPOとはInitial Public Offeringの略で、未上場の会社が新しく上場し、証券取引所で自由に株式を売買できるようにすることです。経営者が一定の支配権を維持したまま、IPOやその後のタイミングでの多額の資金調達が可能になり、事業拡大に向けた投資をスピーディーに行っていくことができます。
・IPOはハードルも高く、時間も要する
IPOを実現するためには、「形式基準」と「実質審査基準」の2つの基準を満たす必要があります。
・「形式基準」とは、株主数や流通株式数に関する基準。
・「実質審査基準」とは、企業のリスクや健全性に関する基準。
この2つの基準を満たしIPOを実現するためには、最短でも2~3年はかかると言われています。
また、一度上場すると増資の手段は少なく、資金調達のハードルも高くなります。つまり、上場後に計画通りに成長できないと、資金調達もままならず低迷してしまうリスクも存在します。
・IPO後、自由な経営が難しくなる
IPO後は短期的な数字を求められる場合が多いため、中長期的な視点での企業経営がしにくいなど、自由な経営ができなくなることもあります。新しい事業に専念したいが、そこに100%フォーカスすることが難しくなったケースなど、IPOでのイグジット後に失敗したと感じている経営者の声も聞いています。
M&Aは、近年増えているイグジット
米国ではIPOよりもM&Aの方が、一般的な選択肢になってきています。2000年以降、M&AがIPOを上回り、ここ数年は8~9割がM&Aという状況です。
日本でもここ最近、ベンチャー企業の方々からM&Aを検討している、と相談を受ける機会が増えてきました。外部環境の変化により、現在の倍のスピードで事業拡大をする必要があるため、IPOに伴うコストと時間的余裕が無いと感じているそうです。
・M&Aは、時間と費用を抑えることができる
円滑に交渉が進めば最短5ヵ月でM&Aができます。期間が短いため、経営が順調なうちに事業を売却することも可能です。
IPOの場合、実現するまでの期間に監査報酬、弁護士報酬、証券会社の引き受け手数料等、年間5,000万円ほどの費用がかかると言われています。もし、IPOまでに2年かかるとしたら、1億円ほど費用がかかります。
一方、M&Aでは、M&Aのアドバイザーへの手数料が譲渡価格の5%、弁護士費用500万円の場合、仮に譲渡価格が5億円とすると、アドバイザーへの手数料は2,500万円、弁護士費用と合わせても3,000万円程の費用で済みます。
・M&Aは、売り手と買い手の双方合意があれば達成できる
M&Aは、IPOのような明確な基準はなく、基本的に売り手企業と買い手企業の双方が合意すれば実現できます。
M&Aのスケジュール、買収・売却価格、M&Aの具体的な手法(株式譲渡や事業譲渡など)などを、売り手企業・買い手企業間で話し合います。
・M&Aは、事業拡大の可能性が高い
M&Aであれば、売り手企業と買い手企業の事業が連携することで、企業ブランド・認知を拡大することも出来ます。売り手企業が単体で事業運営したときより爆発的な成長も期待できます。
また、M&Aにより企業が成長し企業価値が高まることで、売却後も一部の株式を保有し続ければ、2度目のイグジットが期待でき資産を拡大できます。長期的な視点での事業成長を見据えたM&Aに取り組むことが出来るのです。
一方、買い手企業にとっても、自社の得意としない事業を他社から買収することで補完できるだけでなく、熟練した従業員や取引先も買収とともに獲得できるため、時間を無駄にすることのない効率的な経営手段と言えます。
M&Aは、このような性質を持つことから、現代におけるイグジットの主要な形式の一つとして認識されています。経営からの撤退や経営を引退するときに考えうる手段として認知されているのです。
・M&Aには、節税効果も
通常の所得は、総合課税となり所得額が多くなればなるほど税率が高まる累進課税です。経営者の報酬の多くは、税金として徴収されます。
一方、M&Aでの株式譲渡の税率は20%となっています。税率が固定されているため、企業価値を高めて売却額を高く出来れば、より多くの資金を手元に残すことが出来ます。また、退職金との組み合わせで手取り金額を最大化することも可能になります。
イグジットを考えるのであれば、IPOよりM&A
以下のように考えている経営者はM&Aを目指すと良いでしょう。
・創業者利益を追求したい
・事業立ち上げは得意だが、その後の拡大は他に任せたい
・生み出したサービスを多くの人に使ってもらいたい
M&Aを行うと売却後は経営に関与できませんが、新しい経営者のもと事業を継続させることができます。また、売却によって得た資金で、次なるビジネスへの投資、新規事業開発やリタイア生活など新たな活動を行う方も多くいらっしゃいます。
まとめ
イグジットの方法として、IPOだけでなくM&Aも選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか?
失敗しないイグジットを行うためにも、総合的に見てどこを目指すのが得策なのかを考えてみてみましょう。