スルガ銀行への提携~新生銀行とノジマの思惑①~
どのような思惑があるのか
静岡県を基盤とする地銀、スルガ銀行は、かぼちゃの馬車の件(参照:BIZVALメディア赤字企業の背景には何があるのか?②~スルガ銀行からの考察~)を皮切りに、不正融資、社内におけるパワーハラスメントの横行、組織ぐるみでの不正を行っていたことなどが次々と明らかになり、単独では立ち行かなくなっていました。
独力での再生は不可能と判断し、金融機関をはじめ、スポンサー候補と接触、立て直しに向けた動きをしていました。
ここにきて、ようやく新生銀行とノジマが提携を本格的に決定する報道がなされていますが、その内容については、資本提携、業務提携、などまだまだ内容が固まり切っていないようです。
スルガ銀行側も
総額1.7兆円
近い、不正融資の痕跡が見つかり、このような状況で、スポンサーを探すこと自体が、非常に難しい局面であることは間違いないでしょう。
スルガ銀行もこれまで、スポンサー候補としてりそなホールディングスやSBIホールディングスと交渉を進めたり、していましたが、まさに、この不正融資におけるダメージをどの程度見積もるべきか、会計上は「引当金」をどの程度積むべきかなのか、という視点において、提携の判断に待ったがかかってしまったとのことです。
現在残っている新生銀行やノジマはどのような思惑があるのでしょうか。
ノジマの思惑は?
ノジマ、は神奈川県横浜市に本社を置く家電量販店の優良企業です。業界の中では第5位程度、業績は
売上高5,130億円
営業利益192億円
(2019年3月期決算説明会資料より)
となっており、いずれの指標も昨対比プラスで推移と好調なようです。
ノジマとしては、スルガ銀行と地域的・エリア的な重複はあり、顧客層も重複していそうです。
しかしながら、ノジマの戦略としては、金融機関への業務提携に対して、以下のようにリリースしています。
(出所:ノジマ2019年5月15日付「スルガ銀行との業務提携に関する基本合意について 」より一部抜粋)https://www.nojima.co.jp/img/20190515_info-somu.pdf
首都圏を中心に合計 851 店舗のデジタル家電専門店及びキャリアショップを展開し、子会社のニフティ株式会社を中核としてインターネット・IT ソリューションにも強みを有する当社と、リテール業務に強みを持ちインターネットも活用して様々な個人向け金融商品・サービスを展開してきたスルガ銀行が提携し、対面とインターネットにおける強みを相互活用しながらクレジットカードを含めた金融デジタルの経済圏を作ることにより、従来型の銀行サービスから、新しい銀行サービスを創り上げ、様々な顧客に貢献することが可能と考え、本業務提携に向けた検討・協議を本格化させることに合意致しました。
(1) クレジットカードの共同事業化を行うとともに、クレジットカードを用いた対面での又はインターネットを利用した各種金融サービスの向上を図る
(2) 両社の顧客基盤を活用したオンラインサービス及びフィンテック事業の共同展開
(3) 両社店舗での相互商材の販売、販売促進等の営業戦略面でのタイアップ
(4) スルガ銀行の顧客等に対する当社店舗での割引等の提供による、当社の商品・サービスのクロスセル
(5) 神奈川県・東海地域を中心とする地域の活性化
かなり相乗効果に対しては、前向きに検討しているように見受けられます。
ノジマ自体は、実は、市場でスルガ銀行株式を買い集めて5%弱まで保有をしたため、スルガ銀行にお金が入っているわけではありません。
上記の中でも、ノジマのこれまでのITX(携帯電話販売代理業等の会社)、ニフティ(ISP事業会社)の買収などを見ると、かなり野心的かつ、家電量販店といったドメインから脱することで、
・IoT産業の総合企業(B2Cであることは変わりなく)
へと変革していこう、としているのかもしれません。
ここに金融サービスを行うインフラをうまく利用する目論見が当たれば、とも思うのですが、結論、5%程度の出資範囲では、よくある話ですが、目論見を立てて終わってしまう、ことが多いです。
ここで必要なのは、スルガ銀行を傘下に取りこむ、くらいのビッグディールにならなければ、完全に顧客の送客や、記載内容のレベルでの提携の実現は困難であるように思えます。
まとめ
最近の記事で、M&Aの失敗する例とはどんなものなのか、を記載してきていますが、失敗要因の1つに
・中途半端な割合で投資をする
ということが挙げられます。
ノジマの場合は、単純に株式を保有しただけ、といった顛末になる可能性もあり、今後のシナジーの実現について注視してみたいと思いました。
新生銀行の思惑は、後編で、記載します。