オリオンビールのM&A~非上場企業のTOB(株式公開買い付け)~
沖縄のビール「オリオンビール」の買収
野村ホールディングスと投資ファンドの米カーライル・グループが、国内5位のビールメーカー、オリオンビール(沖縄県浦添市、与那嶺清社長)の買収を検討しているとのニュースが出ていました。
オリオンビールは、非上場会社ですが、TOB(株式公開買い付け)により傘下に収める予定とのことです。
非上場企業のTOBということ、いったいどういうことでしょうか。
非上場会社なのになぜTOB?(株式公開買い付け)
オリオンビールは非上場会社ですが、今回TOBの対象となっています。
いったい「なぜ」でしょうか。
これについては、金融商品取引法において、以下のように規定されていることによります。
”金融商品取引法第27条の2等”
有価証券報告書の提出が義務付けられている株式会社等(証券取引所に上場する株式会社など)の「株券等」を発行者以外の者が市場外で一定数以上の「買付け等」をする場合などには、原則として公開買付けによらねばならないと定められています。
ここで、「有価証券報告書」の提出義務、ですが、オリオンビールは提出義務者となります。
オリオンの筆頭株主は10%の株を持つアサヒビール、さらに創業家など個人を中心に599人(18年3月末時点)の株主が存在しています。大株主の状況は下記の通りです。
ここで、有価証券報告書の提出ですが、以下のような株式会社が、各事業年度終了後、3か月以内に金融庁に届出を求められています。
・金融商品取引所(証券取引所)に株式公開している会社
・店頭登録している株式の発行会社
・有価証券届出書提出会社
この中で、
「有価証券届出書提出会社」が今回のオリオンビールです。
株主構成として、599名存在することもそうなのですが、有価証券の募集・勧誘といったところがポイントです。
(有価証券届出書の提出は、投資家保護を目的として課せられた金融商品取引法第4条及び第5条に基づく開示規制上の義務。募集及び売出しの価額の総額が1億円以上の場合や、勧誘を行う相手方の人数が50名以上の場合など、一定の基準に該当する場合において、有価証券届出書の提出を行わないままに、取得勧誘を行うことはできない)
類似の非上場企業における、TOBとしては、
・伊藤忠商事が行ったヤナセに対するTOB
が挙げられます。
(参考)
伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠」といいます。)は、株式会社ヤナセ(以下「ヤナセ」といいます。)を持分法適用会社(所有割合:39.49%)とするヤナセの筆頭株主であったところ、2017年5月25日、ヤナセを連結子会社とすることを目的として、ヤナセ株券に対する公開買付け(以下「本TOB」といいます。)を実施することを公表。
出所:オリオンビール株式会社 第61期有価証券報告書
まとめ
このように非上場会社において、多数の株主がいることはままあり、その際に、有価証券届出書・有価証券報告書提出会社においては、TOBの規制に則って、処理をしていかなければならない、ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
それにしても、国内の第5位のオリオンビールが、このような形で活路を海外に見出そうとする、というのはこれからが楽しみではあります。
直近の売上高、また利益成長が鈍化傾向であった(下記、有価証券報告書参照)オリオンビールを外資PEの雄、カーライルグループがどのように拡張していくのか、今後も注視して行きたいと思います。
キリン、アサヒ、サントリー、サッポロ
に次いでの国内ビールですが、海外でどういった展開をみせ、収益を向上していくのか、楽しみではあります。
出所:オリオンビール株式会社 第61期有価証券報告書