コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)~東芝がCVC機能強化~
苦境に立たされる東芝がCVC機能を強化
東芝が「東芝Nextプラン」において公表した、「事業部大括り化」と「階層のシンプル化」を基本とする全社組織再編の方針に基づき、2019年度に向けた組織運営体制の見直しを発表しました。
その内容や目的はいったいどのようなものであったのでしょうか。
発表の主な内容は、経営企画部に「新規事業推進室」を2019年1月1日付で新設したこと、それに伴い、
1.社内技術資産活用による事業化推進機能
2.社外の力を積極的に活用するCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)機能
の2軸で強化をしていくとのことです。
具体的にはどのような内容なのでしょうか。
投資金額や投資対象領域は?
予算としては2019年度から5年間で約100億円規模の投資を行うこととしています。
年間で換算すると20億円程度が予算となるイメージでしょうか。
領域としては、エネルギー、物流、ライフサイエンス等の成長事業領域とのシナジーが見込める領域でビジネスモデルを有する国内外のベンチャー企業や、こうしたベンチャー企業への投資実績を有するベンチャーキャピタルに対して投資を行っていくとのことで、CVCから直接投資のみならず、ベンチャーキャピタルへの出資もありえるとのことです。
VCへの投資も視野に入れているとのことですが、その場合投資コストが余計にかかることになりますが、おそらく、CVC機能を持ち、ローンチしていくことを発表はしているものの、
ノウハウやナレッジ、そもそも人財面において、東芝内で調達することが難しいから
かもしれません。
東芝のCVCがスタートアップ企業に対する期待は?
「新規事業推進室」の社内外の事業推進を連携させ、これまで東芝が
・アクセスできていなかった社外の技術や知見にアクセスし、社内の技術資産とのシナジーを起こすオープンイノベーションで、有望な新規事業を迅速に創出していくこと
を目指す、目的とするとのことです。
スタートアップをめぐる投資環境とその背景の記事でも触れましたが、CVCは、VCと異なった投資における期待効果を望むことが通常であり、その期待効果として、最初に重視することが
・イノベーション
・ディスラプション(破壊)
へのアクセス、コンタクトとなります。
東芝としては、イノベーションへのアクセス、をCVCを通じて取りに行く、その姿勢を表明したものであると考えられます。
まとめ
筆者としては、大企業である東芝らしく、組織的な忖度の中で、「ディスラプション(破壊)」よりは、「イノベーション(革新)」というキーワードを慎重に選んだような感触を感じています。
耳心地の良さではなく、抜本的な改革や、組織力が求められている中、今後の東芝が生き残るために、本質が何か、は今後も問われることと思いますが、存外、CVCの投資先から出るユニコーン企業などがあり、その投資先に救われていく世界が、早晩やってくるのかもしれません。