事業承継におけるM&A活用の留意点~個人保証は外れるのか?~
・金融機関との間の連帯保証(代表者の個人保証)とは?
そもそも連帯保証とは、何でしょうか。
簡単に言えば、連帯保証人とは
「貸主(銀行)がお金を貸す際に、借主(本人)が返せなくなった際、「借主(本人)と同じ立場で連帯して支払う義務」を負う第三者」
を指します。
この連帯保証人を付けることで、銀行としては「取りっぱぐれがないぞ!」ということで、金融機関はこぞって昔から、
会社がお金を借りるに際して、連帯保証人として、代表者個人を付けていました。
これが世に言う
「個人保証」(会社という法人ではなく、自然人たる個人が連帯保証を負う)
です。
・連帯保証の実効性
さて、本当に連帯保証人をつけることは、金融機関・銀行として取りっぱぐれがないのでしょうか。
答えとしては、金融機関関係者の話を聞くと、最近では
「実効性が薄い=連帯保証の効力は低い」
とのことです。
10年以上前には、よくこの連帯保証人から債権の回収をする、またはバブル時代の崩壊と共に債務返済が出来ない方が続出した時代には、個人保証をしていた方は、個人財産を根こそぎ(言い方が悪くて申し訳ございません)、持っていかれた、などよく聞いた話ですし、
このメディアの読者の中にも、過去のそういった金融機関の行為を聞いた、目の当たりにした、と言う方もいらっしゃるかと思います。
しかしながら、今では実効性が薄まってきた、と前出の金融機関関係者は話します。
何が起きているのでしょうか?
・制度的な融資に対するパラダイムシフト
実効性が薄くなった理由としては大きく2点あるかと思います。
1つは、制度的に、商法から会社法に改正された時点で、会社設立の後押しをする、ということもあり、会社設立時の「資本金の制限」がなくなり、そもそも会社自体の保証力がない状態でも、会社設立ができることが関係しています。
昔は、株式会社の設立には1,000万円の資本を入れる必要がありましたが、極端な話、いまでは1円でも会社は設立できます。
こういった「資本充実」があったからこそ、資本金の額を金融機関のチェックでは重視していましたが、1円の資本金では、充実しているとは言えませんし、100万円でも充実している、とは言いにくい状況です。
このように、会社設立を後押しする中で、保証の意味合いや実効性自体も変わってきており、お金を借りるのであれば、単純に何かを担保に取っておくのではなく、
「健全な企業経営の中で、営業キャッシュフローでしっかりと返済していけるようにする」
が大きな方針になってきていると言えます。
・無保証融資の増加
また金融庁の方針としては、
「経営者保証に依存しない融資の一層の促進のため、主たる債務者、保証人及び対象債権者はそれぞれ努力しなさい」
との考えがあり、現状、金融機関(貸主)側は
「連帯保証人」
をとること自体を推奨しないのが現状です。
(参考:経営者保証に関するガイドライン 平成25年12月)
少しビジュアルでもご覧になると、政府系の金融機関実績とはなっていますが、確実に「無保証」での融資件数・実績が伸びていることがお分かりになるかと思います。
平成26年度 対 平成29年度
・無保証融資件数ベース 19%→34%
・無保証融資金額ベース 24%→52%
と共に1.5倍から2倍のペースで伸びています。
・過去の個人保証はどうなのか?
さて、一番大切な過去の個人保証はどうなのでしょうか。
結論、一度入れたものを外すことについては、地銀、信金ともに
「かなりの抵抗感がある」
とのことです。
新たな融資に関しては、ガイドラインに沿って、または信用保証協会を通しての融資が未だに多いのですが、一度得た権利、そう簡単に金融機関が手放すはずはありません。
・M&Aでどのように外していくのか?
こうした中で、M&Aをするポイントで、会社の代表者からも外れ、株主としての権利の一切を、他社に渡す場合、
「個人保証の地位」
はどうなるでしょうか。
この点につきましては、交渉の結果、または特定のスキームを用いることで個人保証を外していくことが可能です。
最近、弊社へのお問い合わせの中でも多いのが、この
「M&Aによってどうやって個人保証を外すのか、教えてください」
と言ったものです。
ちなみに、当然のことながら
「何もしなければ個人保証を外す」
ことは起きず、株主や代表者から外れているのにもかかわらず
「個人保証だけ残ってしまう」
ということになってしまいます。
メディアの中では記載しにくい部分があるので、詳細は割愛しますが、基本的には、
「保証の付け替え」
「完全に保証を外す」
というアクションのいずれかになります。
いずれにしても、個人保証を外していくに際しては、もしM&Aによる事業承継の場合には、売主の立場から、買主へとしっかりと交渉をし、また企業価値にも関わってくる部分ですので、理解を示して頂く必要があります。
この点についても、弊社では無料でご助言しますので、いつでもお問い合わせください。
お問い合わせはこちらから
・まとめ
今回は、事業承継におけるM&Aの活用に際して、オーナー経営者の方が気になる「個人保証」について、お話しました。
外していくことは出来る、と聞いて、少しはご安心頂けましたでしょうか。
ちなみに、弊社が特定の地銀様と連携をしているからこそ取れるスキームなどもありますし、一概にすぐに外せるものではないことだけは、まとめに代えさせて述べさせて頂きます。
詳しくはお問い合わせ頂けますと幸いです。
なお、個人保証の問題と共に、そもそも「自社の株式価値はいくらなのか?」についても無料で1分で算定できます。
まずは自社の株式価値についても、算定なさってみてはいかがでしょうか?
(借入金が多額の場合、株式価値が1円になることもありますが、その場合でも事業承継が可能なケースが多いですので、お気軽にご相談ください。)