M&Aの仲介業登録制へ
【M&Aの仲介業が登録制に】
M&Aの仲介業者が登録制になることが、2021年4月27日の日本経済新聞に記事掲載されていました。
経済産業省が、中小企業のM&A(合併・買収)を手掛ける仲介事業者につき登録制度を2021年度にも始めるとのことでした。
M&A事業者の中には顧客に対して不利益になる契約を勧める悪質な事例もあるため、優良な事業者を中小企業が選びやすくして、円滑な事業承継を後押しするとの趣旨のようです。
【M&Aにおける仲介業とは】
ここで仲介業者とは、企業や事業の売買をするに際して、
・買い手側並びに売り手側の双方の立ち位置から支援をする
いわば、仲介業者として入り、売買が成立した際には、売り手側、買い手側の双方から成功報酬等のサービスフィーを受領する業者のことを指します。
記事の中では、当該M&Aの仲介で大手上場企業である日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズが手掛けた案件と、全国の都道府県にある「「事業引継ぎ支援センター」が手掛けた案件では2,000件/年間、全国では3,000-4,000件/年間のM&Aが行われている可能性が示唆されていました。
仲介業に焦点が当てられていましたが、基本的には弊社のように
・ファイナンシャルアドバイザリー業務
という
・買い手側又は売り手側のいずれか
の立場からM&Aに関する契約の成約や譲渡等の実行(いわゆるクロージング)に向けた業務を行う事業者、また、中小企業の定義もどのような形で含まれるのか、気になるところではあります。
【利益相反取引】
登録制度になることで、記事にもあったような悪質な契約を進める、も気になりますが、そもそも仲介事業は、双方の仲介、間を取り持つ立場のため、
「自らの利益を最大化する行為」
いわば
「利益相反取引」
が起きやすくなります。
例えば、仲介業者は案件の成約まで成功報酬をもらわないケースも多く、かつ、報酬自体も高額です。この点は、仲介業者の年収ランキングが東洋経済発表のもので常に上位や1位、2位を占めていることからも推し測ることができます(実際に前述の上場企業の多くは、1件のM&Aで数千万円から1億円以上の報酬を得ています。)。
このような、報酬が高額であること、また、成功報酬制度と言うことを考える、更には上場企業として成長を求められること、を鑑みるに、心理的に、
「案件を何としても成約しなれければならない」
という思いに駆られてしまうことは容易に想像がつきます。
【まとめ】
登録制度にすることで、
「優良な事業者」
という優良の定義をどのようにつくるのか、ももちろんですが、そもそもの仲介事業における事業活動の制限や、事業における紳士条項などを制定する必要も、この際合わせて検討すべきではないか、と筆者は考えています。
もちろん、仲介事業自体が悪いことではなく、売り手側、買い手側にとって、仲介事業であることによってメリットが出るようなことがあるのであれば、全員の合意の下で、進めれば、利益相反は防止していくことが出来るとは思います。
また、1件当たりの売上規模などが1億円未満のM&Aも多数存在しますが、その際に、仲介は有用な手立てになることもあります(小規模の場合、極端に情報が少ない、整備されていない、相手方も小規模の可能性もあり、相手方にも専門家が乏しい、知見がないなどM&Aに関する状況、条件が著しく悪い場合)。この場合には、結局最終的には、双方の立場で仕事を進めていくことも多く、一概に仲介事業がNGと言うことではないと理解しています。
仲介事業自体に一定の制約をかけず、登録制にすることで何が見えてくるのか、いったん今回の経済産業省の制度がどのような制度になっていくのか、見守ってみたいと思います。